jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

所長あいさつ

ガボン共和国はアフリカ中部の大西洋岸に面し、国土面積は日本の約3分の2、アマゾン河流域に継ぐ世界第2位の熱帯林を擁するコンゴ盆地に位置しています。国土の85%が熱帯雨林で覆われ、チンパンジーやゴリラ、ゾウなどの動植物が生息するなど豊かな自然に囲まれており、密林の聖者と呼ばれたシュバイツァー博士(1952年ノーベル平和賞受賞)が1913年から生涯に亘って医療活動に従事した国でもあります。

また、ガボンはサブサハラ・アフリカでも有数の産油国で、日量2.1万バレル(2023年)を生産するとともにマンガンなどの鉱物や木材資源も豊富です。他方、人口が約248万人(2023年、世銀)と少ないこともあり、1人当たりGNIは約7,427米ドル(2023年、同)、国連人間開発指標(UNDP)も189か国中112位(2021年)と他のサブサハラ・アフリカ諸国と比べ高い水準にあります。このため都市部では周辺諸国からの外国人労働者が多く経済的に発展しているものの、地方部ではインフラ整備の遅れや農業生産性の低さなどから収入は低くとどまり、依然として都市と地方間で貧富の格差が見られています。これら問題を解決するために、政府は石油関連産業依存からの脱却と2025年までの新興国入りを目指した「台頭するガボン」政策を打ちだし、インフラの整備、産業多角化・加工産業育成(工業化のガボン)、環境保全(緑のガボン)、サービス産業育成(奉仕のガボン)を推進してきました。

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歴史的にはガボンは1960年にフランスから独立、初代大統領にレオン・ムバ氏が就任しましたが1967年にその死去を受けて副大統領だったオマール・ボンゴ氏が大統領に就任、2009年まで7選されました。同氏の死去後には後継として息子のアリ・ボンゴ氏が大統領に就任し親子2代に亘る統治が56年間続きましたが、2023年8月の大統領選挙に不正があったとして大統親衛隊長オリギ・ンゲマ氏がクーデターを主導、当選を宣言していたアリ・ボンゴ大統領は失脚しました。2023年8月からは、オリギ・ンゲマ暫定大統領による軍事政権が始まるとともに、2024年11月には憲法改正の国民投票が実施され、首相廃止と副大統領設置、大統領の3選禁止とともに大統領親族の後継への登用禁止など透明性を重視した改正が成立しました。その後、2025年4月には民主政権に向けての大統領選挙が実施され、オリギ・ンゲマ暫定大統領が得票率95%と圧倒的な支持のもと大統領に就任、5月には大統領就任式が平穏裡に実施され、クーデター後に資格停止されていたアフリカ連合(AU)にも復帰しました。オリギ・ンゲマ大統領による民主政権移行を経てガボンは新しい時代に向かっているようです。

最後にガボンへのこれまでのJICAの協力について記したいと思います。ガボンへの協力は2000年に水産専門家が派遣されたことから始まります。2005年にはJICA/JOCVオフィス(現ガボン支所)が首都リーブルビル市内に開設され、青年海外協力隊員初代6名が派遣されました。以後は順調に事業を拡大し、一時は30名を超えるJICA海外協力隊が派遣され、技術協力も感染症関連や森林保全関連のプロジェクト、ゴリラ観察のエコツーリスム・プロジェクトなど様々な分野で実施されてきました。このほか日本への留学生や研修員も毎年派遣。無償資金協力では、水産無償による零細漁民センター(CAPAL)のフォローアップなどを行っています。

しかしながら、2020年3月に新型コロナ禍により事業が一時中断しました。その後、ガボン政府の尽力によりコロナ第一波は収束、同年12月までにすべての関係者の渡航を再開しました。2025年7月現在、海外協力隊12名、専門家2名(母子保健プロジェクト)、業務調整員1名(草の根技術協力によるエコツーリズム案件)が活動しています。また、5Sカイゼン、アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)や、市場志向型農業振興(SHEP)にも関与しているほか、海外投資アドバイザーも派遣されているなど多方面で支援を展開しています。

JICAはこれからも新しいガボンの国造りのお役に立てるよう邁進したく思いますので、ご支援賜りますよう、よろしくお願いいたします。

2025年7月
JICAガボン支所長 青木 利道