伝統的助産師への指導で妊産婦死亡の減少を目指す(上里JV)

2019年9月23日

コーヒーの産地で有名な中米ニカラグアとグアテマラで助産師として活動していた、滋賀県湖南市出身の上里 佳那子(うえさと かなこ)隊員(30歳)が、青年海外協力隊、助産師隊員として2年間活動し、今年9月に日本へ帰国しました。

上里隊員は、滋賀県内の病院で助産師として勤務していた時、日本語を話せないペルー人の患者さんと出会い、文化の違いを感じることがあり、そこから、助産師として中南米の文化に触れてみたいと思い協力隊を志望しました。

上里隊員は、ニカラグアでの活動中に政治的混乱から国外避難を余儀なくされ、2018年8月、首都グアテマラシティから北西に位置する先住民族が90%のキチェ県ホヤバフ市保健センターで再度活動を開始しました。ホヤバフ市の伝統的助産師(注)は、地元の人々からとても信頼されていますが、平均年齢65歳、未就学率98%、公用語のスペイン語を話すことのできる割合が57%です。妊婦やその家族の知識のなさ、言葉の壁と医療者への不信感からの受診の遅さ、病院へのアクセスの悪さ、異常があったときの対応の悪さから毎年2人~3人の妊産婦死亡が起こっていたため、市内13か所の保健ポストを訪問して妊婦・伝統的助産師を対象に講習会と伝統的なケアに関する意見交換会を行ってきました。

グアテマラの講習会は、主に口頭のみで行います。看護師は頭の中で理解していても、伝統的助産師や妊婦にその内容が伝わっているのか疑問を感じたことから、上里隊員は教材作りを始めました。子宮や赤ちゃんをイメージしやすいように写真やイラストを多く使った教材は、現地の看護師からも高い評価を得ていました。

病院から遠く離れた山間部に住む妊婦さんが安心して日常生活を過ごすために、ホヤバフ市では伝統的助産師はなくてはならない存在です。現地の看護師に対して効果的な指導方法の講習会を行い、教育教材を託しました。今後妊産婦死亡数が0人になることを願いつつ、帰国後上里隊員は助産師として日本国内の地域活性化に貢献できる仕事に就きたいと考えています。また、助産師の知識を持つスペイン語通訳としての道も考えていきたいと意気込みを語ってくれました。

(注)独自の経験あるいは他の伝統的助産師に弟子入りすることによって出産介助技術を身につけた人。地域での妊娠・出産・産褥期の重要なケア提供者となっている。専門的な教育を受けた医師や助産師のような保健医療専門職とは異なり、専門的訓練を受けておらず特に資格もない。

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伝統的助産師と一緒に

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手作りの教育教材で講習会を市内各地で実施