地域警察活動支援プロジェクト

ホンジュラスは中南米地域における最貧困国の一つです。ホンジュラス国内における貧困状況の特徴として、都市部と地方部の格差があげられます。 貧困度、最貧困度について国全体でみると、貧困度は1991年の74.8%から2010年は60.0%、同じく最貧困度は54.2%から39.1%と減少してきています。しかしながら、都市部と地方部で比較してみると、都市部においては最貧困度が1991年の46.7%と比して2010年には約半分の23.7%に減少したものの、地方部においては59.9%から53.7%と僅かな減少しかしていません。また、貧困度については都市部も地方部もあまり減少しておらず、多くの住民が貧困から抜け出せないままでいることが分かります。近年都市部(テグシガルパ市、サンペドロスーラ市)への人口の集中が顕著ですが、これは地方の弱体化、社会経済成長や基本的インフラ整備の停滞がその理由として挙げられます。2010年に発足したロボ政権は「国家ビジョン2010-2038(Vision de Pais)」と「国家計画2010-2022(Plan de Nacion)」を承認しており、貧困削減への取り組みを明言しています。 JICAホンジュラスではこのような課題への取組として、ホンジュラス政府の取り組みでもある地方分権化を視野に入れた地方自治体の能力強化を行うことにより、地域でのガバナンス能力を向上させ、地域住民が安心して暮らせるような社会の構築が必要で、その上で、それぞれの地域資源を有効活用した生活向上及び産業育成への取り組みが必要と考えています。また、それら支えるために必要不可欠である市民安全の確保についても支援を行っています。

今回はその中でも「地域警察活動支援プロジェクト」についてご紹介したいと思います。
ホンジュラスでは、治安状況改善には市民参加による防犯体制の強化が不可欠と考えられています。しかし、警察組織内部の人材の意識改革はなかなか進んでおらず、市民警察活動の強化のための研修強化と実施訓練、及びホンジュラスに適した地域警察のモデル作りと普及が必要となっています。そして何よりも、市民の警察に対する信頼、防犯活動における協力無しには、地域の治安改善は達成出来ません。

プロジェクトでは「日本を参考にしたホンジュラスに適した地域警察のモデルが、テグシガルパ市及びサンペドロスーラ市のパイロット地域での経験をとおして確立する」ことを目標とし、協力期間は2009年1月〜2012年12月の4年間(1年の延長期間含む)です。具体的には、日本の「地域警察」の経験をホンジュラスにおいて現地化させつつ、パイロット地区で地域警察活動を実践し、地域警察活動のマニュアルの作成(注1) 、マニュアルを使った研修と実施訓練(OJT)により、ホンジュラスに適した地域警察活動の導入と定着を実施しています。パイロット地域では地域住民との定期会合、小中学校での防犯研修会、地域の子ども達とのイベント実施、そして日々の巡回や個別訪問を丁寧に行っています。その結果、地域の犯罪件数が低下したり、地域住民からの警察への通報や相談の数が増加したりと、少しずつではありますがプロジェクトの成果が発現しつつあります。地域の住民も「自分たちの地区の警察官は住民の味方だ」、「以前は外を出歩くのが怖かったけれど、今は安心して出歩くことが出来る」など結果に満足しています。また、住民自身も積極的に防犯活動に参加したり、ある地域では警察の施設の建設のために住民が資機材を提供したりしているところもあります。これまでのところ、パイロット地区はテグシガルパ市に3箇所、サンペドロスーラ市に1箇所ですが、ホンジュラスの警察自身の努力でこれからも継続・拡大していくことになっています。

(注1)サンパウロ州軍警察のマニュアルを参考にホンジュラスの経験を加えて作成(2010年10月に治安省内で承認済)

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急病人への対応、地域の病院との連携

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地域の小学校での防犯活動

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地域の子ども達とのレクレーションの実施

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地域警察活動についての広報活動(ポスターの掲示)

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地域の若者との植林活動

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地域警察についての広報活動(パンフレットの配布)

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警察官への研修風景

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地域住民へのインタビュー

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地域の子ども達との誕生会