テヘラン地震災害軽減プロジェクト

背景と目的

イラン・イスラム共和国の首都テヘラン市(人口約1100万人)は世界でも稀有な地震多発地帯に位置しており、約150年周期で大地震に見舞われています。一方、テヘラン市では20世紀以降適切な防災システムの準備がなされないままに急激に都市化が進んでおり、ひとたび大きな地震が発生すれば未曾有の大惨事になることが予想されています。

このような背景のもと、テヘラン地震災害軽減プロジェクトでは1)緊急時の道路網の構築とそのための対策立案(道路防災)、2)住民の意識啓発の向上(市民防災)、3)早期警報システム(早期被害推定(QD&LE)システムを含む))の改善(早期警報)の三分野を中心としたテヘラン市の地震災害対策への備えが向上されることを目的として技術支援を行っています。

  • 実施期間:2012年3月から3年間
  • カウンターパート(CP)機関:テヘラン市総合防災管理局(TDMMO)

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協力概要

本プロジェクトでは、イラン国テヘラン市において1)道路防災関連計画の策定・運用・維持・管理、2)コミュニティ防災関連計画の策定・運用・維持、管理、および、3)早期被害推定(QD&LE)システムを含む早期警報関連計画の策定及びシステムの運用・維持、管理についての技術支援を行います。

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事業ハイライト

JICAでは防災分野において「大テヘラン圏地震マイクロゾーニング計画策定調査」(1998年〜2000年)、「大テヘラン圏総合地震防災及び管理計画調査」(2002年〜2004年)および「地震後72時間緊急対応計画構築プロジェクト」(2007年〜2010年)を通じて継続してTDMMOを支援しています。これら先行プロジェクトにより、テヘラン市は、地震発生による想定された被害規模の甚大さを理解し、TDMMOを通じて地震被害軽減に向けた減災活動を多数実施しています。具体的には、TDMMOには早期警報システムとして早期被害推定(QD&LE)システムが導入され、また、TDMMO独自で緊急対応指令本部を設置するなど地震発災時の緊急対応体制の枠組みとその施設が準備された状況にあります。

本プロジェクトでは、地震発生直後、早期被害推定(QD&LE)システムからの地震情報により初動体制を整え、緊急援助物資の運搬、消防・救急車両の運行のための緊急輸送路を確保するために、橋梁耐震化計画や緊急輸送網維持管理計画等を整備しています。

また、テヘラン市ではコミュニティ防災活動への市民参加を促進しており、防災教育の普及や防災博物館での展示、避難マップの作製や緊急避難訓練の実施などを通じて啓発活動を進めることに寄与しています。

(注)早期被害推定(QD&LE)システムは、テヘラン市に設置している地震計が揺れを感知し、リアルタイムでコンピューターの地図上に、地震の揺れ、建物被害、人的被害等を表示し、テヘラン市緊急対応センターが初動対応を迅速に実施するのに必要な情報を提供するシステムです。

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