外国人として、アジア人として、日本人として、そして、僕自身が考えること

氏名:高橋 哲弥
隊次:2017年度2次隊
職種:青少年活動
任地:カカメガ
配属先:カカメガ更生学校
出身県:北海道

教室での一日の授業が終わり、グラウンドに向かうと生徒たちが木陰で休んでいたり、自分たちで作った”Kenyan ball”で遊んでいたりします。「今日の放課後の練習はなに?」と、熱心に僕と同僚のいる部屋に聞きに来る生徒もいますが、ほとんどの子どもたちが気ままに、自分たちのやりたいことをやりたいようにやっています。目標を持って努力することよりも、時間に束縛されず、後先のことを考えずに目の前の楽しみを純粋に楽しむことの方が彼らの性に合っているのでしょう。ケニア人には欠かせないティータイム。毎日、11時頃になると職員たちはスタッフルームと言われる部屋に集まり、紅茶を飲みながら、彼らの世間話が始まります。紅茶に牛乳と多めの砂糖を入れた「チャイ」は彼らの一日の楽しみでもあるのです。また、そこにいる職員たちと同じ時間を過ごすことで連帯感を作っているのだとも言っています。良くも、悪くも、彼らの一日は彼らの習慣が基盤になっています。日頃の習慣を見直し、よりよい教育活動を目指すといったことは、僕のケニアでのすべての活動においても共通していて、残された活動期間においても議論していきたい課題です。協力隊として、伝えるだけでも、働きかけるだけでも、はたまた、巻き込むだけでも足りないのです。

言わずと知れたケニア人ランナー。アフリカ大陸の東にあるケニアという国。協力隊としての生活を始めてから1年以上が経った今、僕の中にあった「ケニア」というイメージは、次第に変わっていったことに気づかされます。子どもたちはサッカーが大好きです。僕が働く更生学校においても、暇さえあればサッカーをしたいと要求してきます。蚊帳をひも状にして、袋や布を丸めたものを縛ることで、手作りのボールを作っています。サッカーボールを使うこともありますが、僕と一緒に練習をしない時間は”Kenyan ball”を使うことの方がずっと多いのです。サッカーは好きでも、走ることは嫌います。ケニアでもマラソンランナーとして日々トレーニングに打ち込んでいる人はごく限られた数になるでしょう。余暇を充実させるために、または、健康維持のために運動をするといった習慣は、地方に行けば行くほど、彼らの生活からは疎遠になってしまいます。学校にもテレビがあり、放課後の決まった時間にテレビを見ることができます。ケニア人のテレビっ子は思った以上に多く、外でスポーツをするよりも室内でテレビを楽しみたいという子どもたちが当然のようにいるのです。

僕が活動をする学校はカカメガ更生学校です。ケニアの西側にあるカカメガという町にあり、向かいには大学、徒歩15分程の距離には大型のショッピングセンターもあります。ケニアは約42の民族からなりますが、カカメガはルウヤ族が住む地域だと言われています。更生学校には12~18歳くらいの少年たちが約60人集まり、勉学と生活を共にしています。同じ町の小学校には、生徒の人数はおよそ3000人だと聞いているので、毎日、僕が関わっている生徒の人数は少ないのかもしれません。盗みや薬といった軽犯罪、登校拒否や行き場を失ってしまった子どもたち、それに、親が世話をしきれなくなってしまった素行が悪いとされる子どもたち。そういった様々な経験や背景を抱える生徒たちと向き合い、授業や放課後のサッカー指導をすることが僕の活動であり、それらの活動を通して生徒に働きかけていきたいことは、将来につながる学力や技能を高めることと、人としての社会性を養うことです。

生徒とサッカーを一緒にしたり、練習の様子を見ていたりすると、生徒の色んなことが見えてきます。得意なこと、苦手なこと。嬉しいこと、落ち込むこと。貪欲に頑張ること、さぼること。集中できること、なかなか意識を切り替えられないこと。仲の良い人、よくケンカをする人。周りに影響力を持とうとする人、個に執着する人。ケニア人と言うと、僕が日々関わっている個々人が見えにくくなってしまいます。どうしても、ひとくくりにして考えてしまいがちですが、対話をすべきなのは一人一人のはずです。サッカーが生徒や僕自身にとって大切だなと思えるのはそんなときでもあるのです。

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体育の時間と放課後には、このグラウンドで生徒たちがスポーツをしたり、運動をしたりして、毎日、賑やかに過ごしています。

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生徒の活動は日頃の授業や職業訓練だけではなく、学校の畑でのメイズ栽培で忙しくなる時期もあります。

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学校の中庭の周りには、職員の事務所、ミーティングルーム、それに、生徒の共同寝室があります。