ケニアで非行少女たちの更生を目指すこと

氏名:鈴木 まほろ
隊次:2017年度2次隊
職種:青少年活動
任地:ナクル
配属先:ナクル女子保護観察宿舎
出身県:神奈川県

私はナクルというケニアの第4の都市で、売春や窃盗などといった非行や犯罪をしてしまい、保護観察処分となった十代から二十代前半の少女・若年女性たちが裁判所の命令で滞在している宿泊施設(保護観察宿舎)で余暇活動の支援を行っています。具体的には、図画工作、アートセラピー、手芸、リコーダーやピアニカ、ダンス、スポーツ、演劇、ファッションショー、パソコン学習、四則演算等の基礎学習、読書などの毎日の授業と、時々文化祭や発表会をしています。

非行少女の入所施設のため、活動の目的は更生です。具体的には、授業を通して忍耐強く努力すること、自己理解を深めること、他の人のことを考えることなどを学び、また自己肯定感の醸成を目指しています。個人的な能力だけでなく、集団で合奏などを行うことによって、リーダーシップや他の人に合わせるスキルなど、グループで活動する上で必要なことを学ぶことも併せて目標としています。

一度も学校に行ったことがなく「人から教わる」というスタイルが理解できない少女も多いです。収容当初は、彼女たちのほとんどが自分の順番を待てず、グループ分けや時間割に従いません。自分が中心でないと出て行ってしまいますし、目を離したすきにこれから授業をしようと用意していた手芸の見本品を全部隠して自分のものにしたりして、毎日ドタバタと過ごしています。

そんな彼女たちと接して感じるのは、彼女たちは自分に関心を持ってもらうことに飢えていること。施設に入らざるを得ない少女たちなので、両親がおらず親戚に預けられているなど、安定した家庭で過ごした時間が少ないことが特徴です。

去年の夏くらいから誕生日会を開いていますが、毎月の誕生日会のたびに自分の誕生日は明日だと言ったり、私が誕生日をメモしていたノートに自分の誕生日を書き直して毎月祝ってもらおうとしたりします。私は毎日なるべく彼女たちの話を聞くようにしていますが、やはり親といった彼女たちが安心して無条件に甘えられる存在が必要だなあと思います。

また、ケニアで更生を指導するのに、彼女たちが努力することに価値を見出せないという点が難しいです。こちらでは縁故採用による就職も多いですし、警察でも賄賂目的で無実の人を逮捕して有罪にするような噂話を聞きました。身内に警察関係者がいる人に聞くと、政府からの給料が少ないのでそういう手段がないと生活できないから政府が悪いとのこと。生き抜くために他人を出し抜いて自分の得にすることが必要な社会なのです。日本であれば勉強して進学すれば就職に結びつきますが、ケニアは真面目に生活していれば結果が出て幸せな生活を送ることができるという社会でないため、彼女たちに犯罪をしなくてもちゃんと努力すればそれなりの生活が確保でき、結果がついてくると教えても真実味がないのです。

それでも子供の柔軟さ、成長の早さ、吸収力の強さには毎回感心します。ケニアの学校では日本のような美術の授業がないため絵を描くというと最初は躊躇うのですが、自分からどんどん好きな絵を描くようになったり、最初は忍耐力がなく一つの曲を最後まで弾く前に飽きてしまっていた子が、どんどん知らない曲を自力で弾けるようになったりして、日々彼女たちの成長を感じます。これからを担う彼女たちが、JICAボランティアといることで多くのことを学んで、他の人を犠牲にしなくても幸せに生きていってほしいなと思います。

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任地ナクルは第四の都市でありながら、多くの観光客が訪れるユネスコ世界自然遺産にも登録されているナクル湖を擁する都市でもあります。

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アートセラピーで少女たちが描いた絵。自由な自分自身の表現を大切にしています。

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文化祭の様子。たくさん揉めましたが大人数で合奏できるようになりました。