小規模農家の所得向上プロジェクト

氏名:鈴木 雅仁
隊次:2018年度2次隊
職種:コミュニティ開発
任地:ビヒガカウンティ
配属先:エムハヤ農業事務所
出身県:山形県

私の赴任地はビヒカというケニア西部地域です。2018年11月から農業事務所に配属しており、ワークショップを介して技術普及や意識向上のサポートを行っています。現在配属先では『小規模農家の所得向上』という目標を掲げており、2021年12月を目途にこれを実現しようとしています。今回はその取り組みやそこで感じたエピソードをご紹介させて頂きます。

1)チームで取り組む-小規模グループアクション-

私の配属先ビヒガ県はケニア国内で下から二番目に面積の小さい県とされています。東京都よりも小さいです。農業の専有面積が他県よりも圧倒的に少なく、加えて農業技術も十分に普及していません。こうした現状のなか配属先では小規模農家をチームに分けて農作業推進を指導しようと考えました。5-6人をひとグループとし物資の支給や農業指導を行う。こうすることである農家の畑ではバナナ、別の農家の畑ではメイズ、と異なる種類の農作物を効率的に栽培することができます。分業することで専門性が増し、他の人やグループにも培ったノウハウを農家間で共有することができるのです。

2)実体験を介して身につける-ワークショップ-

事務所内で椅子に座ってノウハウを聞くだけではすぐに忘れてしまいます。農家にとっても再現性があまりないでしょう。こうした問題を解消すべく2ヵ月に1回の頻度でワークショップを行っています。手法や感覚を体験することでより再現性の高い学びにすることができます。また不明点があればその場でオフィサー(農業普及員)に質問もすることができます。こうして可能な範囲でフォローアップに努める姿勢が農家にも伝わっているように私は感じます。

3)インフォメーションカード

マーケットで昨年から普及しているカード。消費者の名前や扱っている野菜の品種、産地などが載っているものです。県が発行しておりどんな要素が購買意欲に繋がるかを知るきっかけとして考えられました。浸透度合いは高くありませんが半年前くらいから少しずつマーケットで見かけるようになりました。消費者のニーズを探ることで農家にとって有益な情報を得ることが期待されています。

このように県や事務所と共に所得向上を達成すべく取り組みを続けています。しかしプロジェクトを進めるなかで当然課題も生まれます。予期せぬ異常気象や害虫被害などの天災、指導通りに作業を行うことができず収量が見込めない、モチベーションが無い、数を挙げれば切りがありません。それでも粘り強く着実に回数をこなすことでこれらは解決できると考えています。

おそらく私の任期中に目に見えるような変化をもたらすことは難しいでしょう。しかし農家や事務所が主体となって日々活動していることだけは自信をもって断言できます。これから十数年先こうした取り組みがビヒガに住む人々にとって有益なものになることを期待し残りの任期も全うしようと思います。

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小規模グループ毎に種と肥料を配布している様子。野菜の生育状況や畑の管理の方法をチームで共有することで知識や経験をより効率的に普及することが期待されます。

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農家たちにとっての課題を洗い出し認識するためのワークショップ。雑多にあれもこれも問題だと片付けるのではなく農家が主体となって課題解決に取り組むよう促します。

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インフォメーションカード。県が発行するカードで消費者の名前や扱っている野菜の品種、産地などが載っているもの。少しずつ普及しています。