「JICA海外協力隊 is Back!」-我々の歩みは止まらない!-

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2020年3月、コロナ感染拡大に伴い任期途中で帰国せざるを得なかった隊員たちが残していった荷物と(JICAキルギス事務所にて)

2年数か月前に、コロナ禍が始まって痛感したことが2つあります。一つは、想像しうる未来が現実のものになるとは限らないこと。もう一つは、コロナ禍のような人の手を超えた事象が社会の脆弱な部分を改めて浮かび上がらせてしまったということです。そして現在、コロナ禍が長期化するにつれて、更にもう一つ気が付いたことが。それは、協力隊事業の「強み」も大変な制約を受けているということです。

JICA海外協力隊員は、現地の人の使う言葉を派遣前の訓練で学び、派遣されてからは現地の人々との交わりの中で語学に磨きをかけ、更に彼らと生活を共にする中で同じ空気を吸い、同じ釜の飯を食い、同じ景色を見ながら、現地の人々にとって最適な協力活動(一人一人の隊員にとっての国際協力)を組み立てていきます。その密接な関係性がゆえに、時にJICA海外協力隊員は草の根外交官とも呼ばれ、隊員はそれを誇りとして2年間の長期に渡る活動に取り組み、1965年に始まったその歴史は今もなお世界中の人々の信頼と親愛を受けつつ、今日に至ります。ここキルギスにおいて特に地方に派遣される隊員は、ホストファミリーの下ホームステイをしながら生活し協力活動に従事してきたため、現地の方々と非常に濃密な人間関係を築いていました。それがコロナになり、感染等への懸念から地方への派遣やホームステイも密な環境となるために実現出来ず、これまでのように現地の人々との密接な付き合いや関係性が築きづらい大変残念な状況にあります。

約2年、人によっては3年近くに及ぶ、コロナ前であれば考えられないほど長い派遣までの国内待機期間の中、モチベーションを維持するだけでも大変な人生の葛藤があったのではないでしょうか。いま、キルギスでは2人の隊員が首都で頑張ってくれています。私は、そうした苦難を乗り越え赴任後もなお様々な制約の中、できることから少しずつ現地に溶け込み自らの人生を切り開いている、そんな彼らに"強い"生き様を感じ元気をもらっています。

コロナ禍にあって、心のどこかで人と深く繋がり密な関係を築くことをなかば「冬眠状態」のようにして眠らせている自分を感じていますが、まさに「JICA海外協力隊 is Back!」を体現しながら毎日を生きる彼らと共に、私自身も元気を出して少しずつですが信念をもって前に進んでいきたいと思う今日この頃です。

令和4年6月吉日
JICAキルギス事務所長 川本寛之