いまを生きる!-あこがれ×料理×国際協力-

2022年8月30日

里見 遥(2021年度4次隊 料理)

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今の私、ビシュケクなう(@パンフィロフ公園の観覧車)

前職海上自衛官、幼いころから協力隊にあこがれ、念願かなって今ビシュケクにある学校で日本料理を教えている遥です。

"私がここに来た意味あるのかな、言語もうまく話せない私に何が出来る?"

赴任してすぐ言葉の壁にぶち当たり、職場での自分の居場所がなかなか見つけられず焦りを感じていたころに、私がずっと感じていた疑問です。赴任からようやく6か月が経ち、まだまだ不安や悩みは尽きませんが、協力隊への応募を考えている方の参考にもなればと思い、私の協力隊活動の今をお伝えします。

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協力隊員として活動中の父を訪ねてトルコへ@モスク

まずはきっかけから。私は幼い頃から協力隊に参加することが夢でした。というのも、私の父が元協力隊員で家畜飼育と野菜栽培という二つの職種でタイとトルコに派遣されたことがあります。幼い頃より父から協力隊について聞かされ、協力隊と海外にとても興味を持っていました。高校の時に二週間ほど海外研修に参加したことがあり、そこで見た景色、文化、宗教、言語など新しいことに触れたワクワク!は今でも覚えています。もっと知りたい、学びたい、海外に関わりたいと思うようになり、大学は、もともと好きだった調理に加え外国語や国際関係も幅広く学べる大学に進学しています。大学を卒業してすぐに協力隊に応募しようと考えていましたが、募集要項に料理の職種では実務経験が3年必要とあり、ほかの職種だと倍率も高く行ける自信がありません。そんな時、ちょうど知り合った自衛隊の方から『厳しい訓練があるが仲間と強い絆を作ることができる』と聞きあこがれを感じた私は、3年務めた後に協力隊に応募しようと任期制(3年)自衛官に応募、海上自衛隊で調理を行う給養員になりました。

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前職の職場でin戦闘服

自衛官としての私の職場は、軍艦の上。絶対に食中毒を出せない、限られた食材で和食、洋食、中華、製菓とバリエーション豊かな食事で乗員の任務を支えるのが私の仕事でした。そして無事3年間の任期を終え次はいよいよ協力隊と思っていたちょうどその時、全世界でコロナが蔓延、私の人生計画もそこで足踏みすることになりました。協力隊の訓練が開始されないと聞かされたショックがあっという間に吹き飛ぶほど世の中が大変な状況になりましたが、腕が衰えないように調理の練習をしたり、動画編集のスキルを身に付けたりしながらアルバイトで食いつないでいきました。今思えばそんな日々もあっという間、2021年10月になり念願の協力隊派遣前の訓練が開始され、同期隊員となる23名の仲間と共に語学などの訓練を受け、2022年2月からキルギスで活動を行っています。

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学校でプレゼン中の私(和服を着たらウケました!)

さて、私が派遣されたのは調理師の育成に特化した職業訓練校で、生徒数は約800名。学校からは、日本料理を教えてほしいと言われていますが、一般的なメニューは既に知っていて"飾り切り"も上手な和食担当の先生もいる中、レストランやホテルでの調理場経験のない私には荷が重いのではないかと、自分の経歴に引け目を感じてしまっていました。派遣前の訓練で散々学んだつもりでしたが、あまり成績の良くなかった私のキルギス語はほとんど通じず、先生や生徒ともうまくコミュニケーションが取れなかった私はどんどんネガティブに。毎日気力を振り絞るようにして職場に通っていました。

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こっちでできた友達のおうちで彼女とそのお母さんとお茶

そんなある時、授業で必要な食材を探しにたまたま入ったお店で働いていた日本語のわかるキルギス人に出会い友達になりました。それからの日々は、辞書で調べてもよくわからない言葉は彼女に教えてもらい、学校ではGoogle翻訳を駆使して何とかコミュニケーションを成立させました。同僚の先生に協力してもらいながらプレゼンを作成して先生たちの前で発表したり、少しずつ学校での活動も進めていきました。始めのころは話しかけてくれても会話すらできませんでしたが、話せる言葉が少しずつ増えて一緒にお茶をしたり、先生のお宅に遊びに行けるようになりだんだん生活も楽しくなってきました。何より、前は学校の中で孤立していましたが、先生の輪の中に入れるようになったことがうれしかったです。コミュニケーションと聞くと言語がどうしても重要視されますが、手段は他にもたくさんあることをキルギスで実感しています。料理、歌、写真、洋服など大事なのはあなたと話したい、あなたに興味がある、知りたいんだという気持ちが大切だとわかりました。

先日、今年度の生徒の卒業試験の採点補助を行いました。私がかつてそうだったように、これから料理人としてのキャリアをスタートする生徒たちのキラキラした様子に、感慨深いものを感じます。約1か月近い夏休み期間を経て9月から新たな年度が始まり、いよいよ私の授業も本格化します。それまでは語学学習をしつつ、キルギスの食材とこれを使った日本食のレシピ研究などの授業準備です。しばらく前までは、初めての長期海外生活、言語、文化、活動で戸惑い、うまくできない自分を責めネガティブな時期が続きましたが、そんな時ある人に言われ助けられた言葉があります。

『できないことを責めるのではなく、どんな小さなことでも一つ一つできたことに目を向け積み重ねていきましょう』

そして、元隊員の私の父は、

『十分活動している。問題ないよっ』

と言ってくれています。

前職も厳しい職場でしたが、ここには別の大変さがあります。でも、私にできる何か(料理)で、ここにしかない、今しかない、新しい世界を見てこようと思っています!

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国内旅行で見た最高の景色@イシククリ州トゥングチというところ

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同僚とピクニック!すぐ近くにこんな素敵な景色が!!