JICA海外協力隊×チャレンジ×成長

2024年3月1日

里見 遥(埼玉県出身 2021年度4次隊 料理)

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協力隊の2年は“チャレンジ!”

 初めての海外長期滞在。キルギス語を使い、先生として料理を教え、日本語や日本文化も教えた。25歳の私にとって、初めて尽くしの2年間。いろいろ大変だったけど、いざ振り返ってみると“チャレンジ”、そして“成長”という言葉が最後に浮かんだ。

 いつか行こうと憧れていたJICA海外協力隊、いざ選考に合格し派遣前の訓練も受けたものの、キルギスに来る前から私にホントにできるのか、役に立てるのか不安を抱えたままでキルギスでの生活が始まった。どうふるまえばいいのかわからず、言葉もわからない、仕事も何もできず役に立てていないと感じる日々、活動が軌道に乗ったと感じるまで1年近く足踏み状態が続いた。
 派遣先の職場には、私につきっきりでサポートしてくれる人なんかいない。誰もが忙しそうで、誰にどう頼ったらいいかわからない。そもそも、何かを相談しようにもキルギス語でどう言ったらいいのか、いざ困ったときに必要な言葉が見つからない。キルギス語とロシア語、2つの言語が使われる国で、その国の言葉を学びつつ同時に人にものを教えるという責任の重い仕事をする。
 『そもそも学校の先生って?授業ってどうやってやればいいんだろう?』
同僚の先生からは模擬授業をして欲しい、学生へは1時間の授業して欲しい、学校のイベントでデモンストレーションをしてほしいとリクエストは止まらない。


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アセリちゃんのお家でお母様とティータイム

 長かった夏休みが明けて新学期が始まり、とりあえずやってみようと思い、作った原稿を誰かにチェックしてもらいたくても、学校の先生たちは誰もが忙しそうで話しかけられない。困りかけていた時、たまたま入ったショップの店員さんが私に声をかけてくれた。彼女は私になんでも聞いてください!手伝いますっと気さくに言ってくれ、その言葉に縋るように私は原稿をチェックしてもらった。思えばこの時のことが、私のキルギスでの活動が動き出したきっかけだと思う。あの時、私に声をかけてくれたのは、ショップでバイトをしていた大学生のアセリちゃん。彼女は、私の行き詰まった顔を見て思わず声をかけてくれたそうだ。彼女の助けを借りて授業案を作成したが、結局その授業は予算オーバーでできずじまい。でも、どうやれば授業案が作れるのか、感触をつかめた経験となった。


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あちこちに張られた附箋

 一向に伸びない語学力に悩みつつ、キルギス語だけでなくロシア語も使われる学校で、ほとんど喋らず孤独を感じる日々。現地で知り合った日本人からキルギス人を紹介してもらったり、学校外のイベントや交流に力を注ぐようになる。
 そんな時、他国に派遣された同期がTikTokで有名人になり、私もその波に乗っかろうと一本の動画を発信したところ、その動画がプチバズり。それが後にキルギス語のスキルアップにも繋がった。私をTikTokで知ってくれた人がちらほら。配属先でも私の動画を見て声をかけてくれるようになった。単語を覚えるため付箋を家中に貼って暗記した人のやり方を参考にしたり、派遣中の協力隊員同士で新しく学んだキルギス語をワッツアップで共有したり。やれること、できそうなものには全部手を出してやってみた。
 ずっと、言語は正しく話さないといけないと思っていた。意思を伝えることが目的なのに、単語や文法を意識しすぎて結局内容が伝わっていなかった。授業もそう。言葉がわからない分、原稿を作って授業中に読み上げても、生徒たちからは期待したような反応がない。それより、その場で学生の目を見てジェスチャーを使ってでもなんとか伝えようとすると、めちゃくちゃ授業の雰囲気が良くなって会話にも花が咲く。『外国人がキルギス語を頑張って話す姿は、学校にいるキルギス語に自信がない学生にとってモチベーションになる。』ある時、職場の先生がそう言ってくれた。
 最初は自分が話すと笑われて、それが恥ずかしくて話せなくなることもあり、外に出たくない時もあった。しかし、伝えることに意識をおいて話し、少しでも伝わると自信が付き、堂々と話せるようになり始めた。


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調理実習

 キルギスの生活は、今までの自分の固定観念が覆される瞬間の連続だった。現地の先生方は、成功や失敗することをそこまで重要視していないように見えた。たとえ少しでも可能性があるならば、とりあえずやってみる。そして、一人でやらず何の気兼ねもなく近くの人に頼み、助けを求める。私もそんな様子を見習い、人を頼り、人に任せながら活動を進めていった。


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お寿司は大人気!(学校のイベントで)

 最初はコミュニケーションを取るのがむずかしくても、だんだん理解し合える。一緒に取り組むと、お互いに学びがあることに気づいた。そして新たなアイディアが生まれる。回数を重ねるごとに、いい授業ができた。
 いつの間にか、あんなにわからないと思っていたキルギス語でテレビのインタビューに答えたり、現地のインフルエンサーと料理動画を一緒に作ったり、学生にどうやって言語を身に付けたかなどと話して聞かせた自分が今でも信じられない。苦労したことや恥ずかしかったこと、失敗したこと、とりあえず何でもやってみたその全ての経験が今の自分の自信に繋がっている。


 やり方や見た目にとらわれ、なかなか一歩を踏み出せなかった私が、今ではとりあえずやってみるかの精神で動けるようになった。うまく行ったり失敗したりを繰り返しながらも、とりあえず前進していること、行動しなければ成功もないことを身をもって知った。
 自分の無知や力不足を感じることがあっても、悲観する必要は全くない。出来ないことに対して無理をするより、何でもチャレンジして、出来ることを新たに見つけて伸ばしていけばいい。とりあえずやってみること、そのチャレンジ精神こそが自分を大きく成長させてくれると身をもって学んだ。


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旅で見たすごい景色(スカスカというところ)

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左:人生初マラソンはキルギスで(シルクロードマラソン!)
右:人気インフルエンサーAidanaちゃんの料理番組に出演

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旅で見たすごい景色(アラコル湖という氷河湖)