2024年10月22日
板倉 佑真(愛知県出身 2022年度2次隊 日本語教育)
「海外という日本とは違う環境で生活するにあたって、どのようにストレス解消をしていこうと思っていますか?」
これは、私がJICA海外協力隊に応募した際の面接で実際に聞かれた質問です。みなさんなら何と答えますか。私の答えは「その国の民族楽器を習って演奏する」というものでした。何かその国に関連したことで、且つ音楽が好きだから。そのくらいの理由でしたが、その時はこの答えが現実になり、かけがえのない時間になるとは思っていませんでした。
大学時代
思えば、ずっと音楽がそばにある人生でした。幼稚園からピアノを始め、中高では吹奏楽部、大学ではオーケストラ部に入り、勉強もそこそこに、音楽に夢中な学生時代でした。コツコツと練習を積み重ねていけば確実に良いものができるところ、音楽をしている時間はそれだけに集中できるところ、演奏中に仲間と目が合う瞬間、耳が覚えている思い出が増えていくところ、音楽の魅力にどんどんはまっていき、離れたいと思うことはありませんでした。社会人になってからもアマチュアオーケストラに参加していましたが、キルギスへの赴任が決まった際には「2年間は音楽ができない」と腹をくくり出国しました。
サッカーW杯U20 キルギスVS日本戦のオープニングアクト(向かって左から三番目が私)
さて、いざキルギスに来てみると、音楽から離れるどころか、音楽漬けの日々が待っていました!色々なご縁があり、キルギスの伝統楽器(管楽器のチョポチョール、弦楽器のコムズ)を習い始め、キルギスの音楽を通して多くの出会いがありました。また、日本関連の行事では私がずっと日本で演奏してきたトロンボーンを吹く機会もいただくようになり、2年前には想像もしていなかった楽譜に追われる日々を送っています。(もちろん本来の活動も忘れずに…!)
コムズの先生と隊員仲間たち(向かって左から二番目が私)
キルギスで音楽をしていて感じるのは、音楽はコミュニケーションツールでありメッセージであるということです。言語が拙くても、コムズの先生が言いたいことは演奏を通して理解できるということ、自分たちの演奏を聞いている人の反応で何かが伝わっていることを感じられること。多くの曲や歌が何かを伝えるために作られたものであることは、誰もが知っていることですが、言葉が上手く伝わらない環境にいると、音楽が持つメッセージ性をより強く実感します。
コムズの先生は、いつも「私たちの伝統音楽に興味を持ってくれてありがとう」と言ってくれます。また、コムズを弾くとキルギスのみなさんはとても喜んでくれます。でも、本当にお礼を言わなければいけないのは私の方です。音楽を通して、キルギスの考え方や伝統を知ることができたこと、人とのつながりができたこと。これらは、私にとってかけがえのない財産となりました。キルギスで私の音楽活動に関わってくださっているみなさんに、感謝を伝えたいです。
左:日本センターでのイベントにて、子どもとふれあい
右:バンド“スシバルマック”の仲間と
コムズ仲間と