SARS流行時のJICAの取り組みを振り返る

2020年5月26日

現在、世界では新型コロナウィルスが蔓延し、各国で様々な取り組みが行われていますが、私たちは過去に何度も感染症と闘ってきました。2002年に世界で最初の患者が見つかったSARS(重症急性呼吸器症候群)もその1つです。

SARSがアジア各地で流行した際、JICAはラオスを含むアジア各国にマスクや防護服などをいち早く供与し各国の取り組みを支援しましたが、併せてラオスでは、JICA専門家の岩田和子さんが首都ビエンチャンにある国立セタティラート病院の看護レベルの向上ため、看護管理や看護技術の指導を行っていました(注)。現在もセタティラート病院はラオスにおける中核病院の一つとして、新型コロナ肺炎対策のみならず、さまざまな感染症の対策に重要な役割を担っています。

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2003年には院内感染対策のためのワークショップが保健省やWHOの担当者により開催され、その後は岩田さん達JICAプロジェクト関係者が中心となり、院内にて看護師を対象に、基本動作である手洗いや消毒の方法、防護服の適切な着脱についてトレーニングを行いました。更に事務員に対しては患者が来訪したときの対応方法を、掃除係には器具の扱い方と掃除の仕方をそれぞれ指導し、合計で100人以上が参加。また院内の感染対策委員会でも、職種を超えてみんなで院内感染防止について議論しました。

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岩田さんはその時のことをこう語ります。「幸いなことにラオスはSARSの被害を受けずに済みましたが、看護指導の際は、必要以上に怖がる必要はないけれど、確実な動作をすることに気を付けるよう心掛けていたのを思い出します。あの頃のラオス側のカウンターパートの中にはすでにリタイアした方もいますが、今も働いている人からは、当時に比べて看護職員の業務意識や責任感が高まっているという話を聞きました。当時のラオスはトップからの指示を受けて行う業務がメインでしたので、院内で職種を超えた感染対策委員会の開催を提案してもなかなかその必要性が理解されませんでした。しかし数年後にある職員から「あの時はわからなかったが、今はイワタが言っていたことが理解できる。みんなの意見を聞いて話し合い、自分たちで対応策を探せるようになった」と言われ、とてもうれしく思いました。」

今まで数多くのJICA専門家や青年海外協力隊員が病院での看護管理や院内感染対策を支援してきており、それらの長年の協力は、今回の新型コロナウィルス対策の下支えとして生かされています。

(注)セタティラート病院改善プロジェクト(技術協力事業) 1999年10月~2004年9月