ラオスの人びとの健康と命のための「手洗い運動」の取り組み

2020年11月25日

ラオスでは、11月半ばの時点で、新型コロナウイルスの累積感染者数は25名、7か月間にわたり市中感染の報告がなく、現在まで制圧に成功しています。一方で、世界各国で新型コロナウイルスの蔓延が続いており、ラオスにおいても、いつ流行が始まるか、油断できない状況にあります。

そのような中、JICAでは、感染症予防において最も重要な「手洗い」の習慣化を通じ、ラオスの人びとの健康を守っていくために、政府機関や開発パートナーと協働して、全国的な「手洗い運動」の取り組みを開始しました。

「世界手洗いの日」に、手洗いを取り入れた水道教室を開催!

「世界手洗いの日」の10月15日、ラオス中部カムアン県の学校で、JICAと同県水道公社の協力により、ラオスで初めて、手洗いを取り入れた水道教室が行われました。

水道教室は、水道事業の普及とともに、水道のしくみや重要性を国民に広く理解してもらうことを目的に、JICA専門家の助言により、2014年からラオス各県の水道公社で実施されているものです。今回は、カムアン県水道公社が小中学生向けの水道教室を開催するにあたり、JICAから手洗いを取り入れることを提案、JICAの技術協力プロジェクト「水道事業運営管理能力向上プロジェクト(MaWaSU2)」の協力も得て、手洗い活動を含めた水道教室が実現したものです。

同水道教室に参加した中学1年生のブンミーさんは、「これまでも手洗いはしていたが、水道教室で手洗い7ステップを教えてもらい、今後は、より時間をかけて丁寧に手洗いしたい」と話しています。

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手洗い運動を全国に展開し国民全体の健康増進につなげていくためには、「手洗いの日」のイベント実施だけでは十分ではありません。今後、首都ビエンチャンでも水道教室が行われる予定ですが、さらにこれらの経験を全国の水道公社に共有し、水道教室における手洗い普及活動が全国に定着していくよう、ラオスの水道公社と二人三脚で取り組みを続けていきます。

青年海外協力隊による医療機関における衛生学的手洗い普及の取り組み

世界中で新型コロナウイルスの院内感染の報告が後を絶たない中、病院等医療機関における手洗いの徹底も極めて重要です。ラオス南部の中核病院であるチャンパサック県病院では、青年海外協力隊の支援により、衛生学的手洗い推進の取り組みが継続的に行われています。

2019年2月に同県病院に赴任した青年海外協力隊員の吉田裕美子さんは、着任後の病院巡回を通じて、医療従事者の手指消毒の回数が少なく、また手洗いが不適切であると感じることが多々あったとのことです。そのため、新型コロナウイルスの流行が始まる前の2019年10月、その10月を手洗い強化月間と定め、カウンターパートとともに病院内23科180人の医療従事者に対して、手洗いチェッカーを使用した衛生学的手洗いの訓練を実施しました。また同県病院の正面にあるチャンパサック保健短期大学においても、将来医療従事者として活躍する若い人材に正しい手洗いの知識を身につけてもらうことを目指し、127名の看護学生へ同様の衛生学的手洗いの指導を行いました。

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吉田さんは、今年3月、新型コロナウイルスの世界的流行を受けて一時帰国、今は日本から遠隔で活動しています。手洗い月間と決めた今年10月には、カウンターパートとオンラインで打ち合わせし衛生学的手洗いの動画を作成、1年前の訓練のフォローアップとして、11月初旬にその動画を用いた訓練を行いました。

「感染症を食い止めるのは何も最先端の研究や新薬だけではありません。医療者や患者、家族が、基本的な日々の技術を身につけることも大きな防御手段となることを改めて知ってもらいたい」、新型コロナウイルスの感染が始まったときに吉田さんが語ったこの言葉は、より一層の重みをもって病院の医療関係者に届いています。

多くのパートナーとともに、「手洗い運動」の全国展開と定着を目指す!

「手洗い運動」を全国的に展開し定着させていくためには、ラオス政府はもちろん、ラオスで活動中の多くのパートナーとも協力して、「手洗い運動」のムーブメントを起こしていくことが望まれます。

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ラオスでは、国連児童基金(UNICEF)が、日本政府の支援も得て手洗い普及のためのTV番組やポスター、冊子などを作成し、手洗い普及活動に取り組んでいます。今回は、UNICEFがラオスの状況を踏まえて作成した各種ツールを共有していただき、水道教室などJICA事業で活用しています。また、ポスターについては、JICA事務所が率先して、ラオス国内で活動している多くのNGOをはじめ、学校や店舗、スポーツクラブ、日系企業工場等、幅広く配布を始めています。

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手洗いの習慣をつけることは、新型コロナウイルス対策のみならず、その他の感染症の予防や健康増進のためにも効果的であり、保健財政上も費用効果が高いことが確認されています。JICAは、「健康と命のための手洗い運動」を全世界で推進していく方針を掲げ、井上きみどりさんによる手洗い啓発マンガの作成など、ツールや教材の作成を進めています。開発途上国の現場では、当該国の状況に応じてそれらのツールの現地への適用を図りながら、また政府機関や現地の開発パートナーとも連携して、「手洗い運動」が定着していくよう取り組みを続けていきます。