所長あいさつ

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マラウイの紙幣には、古代魚を思わせるような熱帯魚が印刷されています。マラウイ湖産のシクリッド種です。アフリカと言えば平坦なサバンナをイメージしがちですが、エチオピアからモザンビークまで大陸を南北に大地溝帯が走っています。マラウイはその大地溝帯の南西端に位置し、標高3000m級のムランジェ山と深度700mのマラウイ湖を擁しています。マラウイ湖は「湖のガラパゴス諸島」と言われるほど固有種が豊富です。地球の造山活動と生物の進化が生み出した、優雅なブルーの熱帯魚は、観賞魚として日本にも輸出されています。

ところが、魚影の美しい水中の世界から一転して、地上には厳しい現実が広がっています。北海道と九州を合わせた国土面積に人口1700万人が居住し、人口密度は隣国ザンビアの約9倍に及びます。人口の半数が18歳以下で、労働人口の8割が自給自足型の天水農業に従事しています。農業はGDPの3分の1を占める主要セクターであるものの、技術や品質、生産性など改善の余地は大きく、干ばつ・洪水等の気候変動に脆弱であり、食料危機への対応は常に国家の重要課題です。輸出の主要産品は葉タバコですが、世界的に禁煙運動が広まる中、葉タバコに代わる輸出競争力を持った農産品が長年模索されています。

残念ながら、マラウイの一人当たりGNIは350ドル(2015年)で、人間開発指数も188か国中170位(2016年)にとどまっています。国家予算(2016/2017)は1650億円に過ぎず、かつてはドナーの支援割合が40%を占めたものの、2013年の汚職事件により財政支援が停止し25%に低下しています。

さらに深刻な問題として人口増加があります。2025年には人口が2300万人に達するとの予測もあり、教育の問題、若年層の雇用問題が新聞紙上でも指摘されています。すでに小学校1クラス100人という状態も見られ、教育施設の拡充とともに、質の改善と向上に努めていかねばなりません。栄養不良に伴う生産性の低下がGDPの10%に相当しているという試算もあり、国の発展を考える上で、次世代の育成は極めて重要な課題です。

人づくりに加えて、水とエネルギー供給も喫緊の課題です。健康で安全な暮らしと経済活動に欠かせないこれらの資源は、今でさえも農村部、都市部ともに24時間の安定供給には程遠い状況です。しかしながら、水は2035年までに2.5倍、電力は2020年までに2倍の需要増が予測されており、抜き差しならない将来が迫っています。

幸いなことに、マラウイは独立以降、一度も紛争はなく、平和で政治的に安定した歴史を経験しています。Warm heart of Africaと呼ばれる所以です。今後10年、20年先にわたって人口圧力が増大する見込みの中で、内陸の少資源国という制約を克服し、持続的かつ公平な経済成長と豊かな国民生活を遂げるには、人間開発とレジリエンス強化を強力に推進していく必要があります。人間の安全保障とインクルーシブな成長を意識し、単一セクターにとどまらない全体を俯瞰したアプローチを常に志ざしながら、将来を見据えた人間開発と、基盤インフラ開発による着実かつ強固な国づくりを支援していきたいと考えています。

マラウイ事務所長
木藤 耕一