インターンレポート4「マラウイの病院と医療系のJICA海外協力隊 in ムズズ」

2020年4月9日

2020年2月から3月までJICAマラウイ事務所でインターンとして働いていた藤田修平と申します。インターン期間中に感じたこと・考えたことを、このレポートを通じて伝えていきたいと思います。

先日、ムズズというマラウイ北部の都市に行きました。ムズズは首都リロングウェよりも涼しく、物価も安く、コンパクトなので、非常に暮らしやすい都市だと思います。さてムズズに来た目的はJICA海外協力隊の視察です。計4名の活動を視察しました。そのうち、2名は理学療法士として病院に拠点を置いているため、実際に病院にも訪れました。今回紹介するのが河上彩隊員と神矢紀よ実隊員です。河上隊員はムズズ中央病院、神矢隊員はカタベイ地区病院で活動しています(カタベイはマラウイ湖畔の町です)。

河上隊員の配属先であるムズズ中央病院はマラウイに5つある公立の上位医療機関です。実際目の当たりにすると、世界最貧国の病院とは思えないです。広い土地、平屋作り、冷房付き臨床検査室も完備されています。マラウイ政府が病院の充実化を図っていると思っていたところ、施設や医療器具には星条旗、中国国旗、ユーロ旗、国連機関の旗等が見られました。また中に入ると画鋲代わりに注射針、入院患者が床で寝ている、十分に管理されているとは言い難い医療器具管理、悪臭等改善すべき点が多くあると思いました。河上隊員は、マラウイの病院事情や課題を多く話してくれました。その中で最も印象的な話は、「マラウイには型がない」ことです。マラウイは何もないから、自分(日本)のやり方でやってほしいとカウンターパートから言われたそうです。河上隊員は、現地に沿ったやり方に自分の技術を応用したかったが、そもそも現地のやり方がないことに戸惑ったそうです。またマラウイ人は他人に干渉しないが故に、自分のやり方で周りに受け入れられるか心配だと言っていました。想定外な状況の中で、河上隊員は同僚とコミュニケーションをとっており非常に良好な関係を築いていると思えました。実際に河上隊員の指示の下、同僚が動いている姿を何度も見られました。

次に、神矢隊員の配属先であるカタベイ県病院を訪問しました。同病院は、カタベイ県で一番大きな病院ではありますが、できる治療は限られ(例えば手術は基本的なものしかできないそうです)、より充実した治療を行いたい場合にはムズズ中央病院に行く必要があります。でもカタベイ病院は、できる限りの努力をしていると思います。まず写真を見ていただけるとそのきれいさに驚きます。また実際に中に入るとどの部屋もキレイに整頓され、ほこりも見受けられず、入院環境も快適に見えます。さて神矢隊員は、スリランカとマラウイの両方を経験している隊員です(スリランカでテロがあり振替地としてマラウイに着任しました)。スリランカでは理学療法が発展しており本業が忙しかったそうです。しかしマラウイでは2009年に理学療法士の養成学校が発足したため、多くのマラウイ人は理学療法を知らず、病院関係者でも適切な活用方法も正確には分かっていないと言っていました。またカタベイ県病院は全体の患者数も少ないので病院での理学療法士としての仕事も少ないそうです。その一方で町では骨格に問題を持つ人が多いと実感し、子供の時に理学療法で矯正すれば改善されると分析しています。そこで、神矢隊員は町のすべての診療所を巡回し連携強化や理学療法の普及を行っています。「まずは多くの人に理学療法について知っていただき、迅速な治療ができれば嬉しい」と言っていました。

最後に、2人の隊員は、「病院運営・管理が上手くいっていない」と共通して言っていました。具体的に診療科間の連携、患者管理、入院管理等があります。特に診療科間連携が上手くいかないので時間がかかって症状が悪化してしまうという事例をいくつか見たそうです。私は、ここに新たな国際協力の形があると思います。現在JICA海外協力隊には病院運営管理という職種がありますが、もっとこの職種の需要があると考えます。病院運営の改善を促すことで効率よく治療ができ、病院の出費を浮かせることができると思います。その浮いたお金を患者のために使えばより充実した医療を提供できるかと思います。

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ムズズ中央病院と河上隊員

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ムズズ中央病院の理学療法室の様子(器具は充実しています)

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カタベイ県病院と神矢隊員(病院の唯一の欠点としたら看板の破損です)

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カタベイ県病院の薬剤保管庫