インターンレポート5「看護師資格を活かしたJICA海外協力隊活動 in ムズズ」

2020年4月16日

前回は、2名の理学療法士の隊員を紹介しました。次に紹介したい2名の隊員は横濱美帆隊員と藤田真希隊員です。2名とも看護師の資格を持ちながら、それぞれ公衆衛生と感染症・エイズ対策の活動を行っています。

横濱隊員はヘルスセンター(保健所)を拠点に、公衆衛生の活動をしています。横濱隊員は幹線道路から約40km離れた農村部にいます。拠点の町から道路状況によって1時間~3時間かかるところです。このような農村部にいるため、生活用水はすべて井戸の水を使用し、通信環境や電力状況は非常に脆弱です。さらに住民の教育も行き届いていないため、活動は現地語のトゥンブカ語の使用が必須ですが、横濱隊員は流暢に使いこなしていました。視察当日は、ヘルスセンターでの健康講話の様子を見学しましたが、その流暢な言葉に加え、絵や歌を効果的に使う工夫もし、誰にでも分かりやすく伝える姿が印象的でした。横濱隊員の現在の活動に辿り着くまでが長かったそうです。ヘルスセンターの同僚職員のやる気がバラバラで活動がうまくいかなく、配属されてから半年は何をしていいのか分からなかったと言います。そこでトゥンブカ語を早急に習得して患者や同僚とコミュニケーションをとることを意識したそうです。すると、どのような行動が必要なのかを考えられるようになり活動も円滑に進み始めたと言っていました。さらにトゥンブカ語を話せるようになってから村の住民にも心から受け入れられたそうです。横濱隊員の仕事面でも生活面でも現地に染まる姿勢に同じ日本人として誇らしさを覚えました。

藤田隊員は感染症・エイズ対策の一環として主にHIV陽性者の収入向上支援をしています。またそれだけに留まらず、小学校での性教育、セックスワーカーの現状調査、若者や支援者コミュニティの連携作業等、様々な活動を行っています。多岐に及ぶ活動において、“社会的弱者を作らないこと”を大きな目標に活動していると私は感じました。そのために小学校でHIVの危険性を教えて社会的弱者を作らせない一方で、HIV陽性者への支援を通じて社会的弱者を社会から取り残されないようにしているのだと思います。コミュニティの状況によって感染症・エイズ対策の活動内容を自在に変えていることに驚きました。しかし藤田隊員は、“カネ持ち”だと思われていたことに苦労したと言っていました。その“カネ”目当てで現地のマラウイ人の多くは藤田さんの活動に協力していたそうです。しかし藤田隊員はボランティアであり、“カネ”の分配がないことが分かると協力や活動に消極的になったと言っていました。またとある場所では、ボランティアだと紹介すると、「で、あなたは何をくれるの?」と言われたそうです。私なら「マラウイ、だから一人当たりのGDPが世界で最低レベルなんだ」とボソッと言ってしまうと思います。しかし藤田隊員はこのような逆境に負けず正面から説得し自分の活動に協力してもらう必要性を説き、理解を得ている姿を拝見しました。

以上の隊員の活動を視察して、隊員の現地への順応力や超異環境でもハイモチベーションでいられる体力に驚かされました。私は隊員とJICAの活動のもっと強固な連携が求められるプロジェクトがあってもいいと思います。例えば隊員の任地のヘルスセンターの冷蔵庫が修復不可能になったとしましょう。それをJICAが仲介して日本のいらなくなった冷蔵庫を早急に送ることができるプロジェクトや、隊員の任地でJICAのプロジェクトを同時に行い隊員もそのプロジェクトに関わる構図がもっと多くあってもいいかもしれません。

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横濱隊員の健康講話の様子

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ヘルスセンターの写真(日本の支援で建てたセンターです)

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藤田隊員が主催した映画観賞会(風をつかまえた少年)

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藤田隊員の小学校での保健教育