マラウイボランティアレポート「広がれ、世界。ンサナマ村のキャリア支援」

2020年9月9日

名前:森 和弘
隊次:2018年度2次隊
職種:小学校教育
配属先:NSANAMA Teacher Development Centre
出身地:愛知県津島市

世界の最貧国の1つ、マラウイ共和国の経済格差は深刻だ。村の小学校を活動対象としている私はこの問題を肌で感じる。都会に出れば、綺麗な服や靴に身を包んだ子ども達が流暢に英語を喋る。一方で、村の子ども達はボロボロの服を何日も亘って着続け、裸足で走り回っている。この差は何か。当然、生まれ持った環境の違い、そこで受ける教育の質など、挙げれば有利不利は多々ある。しかし、きっとこの差は埋める事ができると私は思う。現にこの村から成り上がっていった先人も確かに存在している。村に生まれ、貧しいからと諦めている人々とは何が違うのか。

それは、具体的に何をすればその夢を掴めるかのビジョンを明確に持てるかどうかだと考察する。それにはまず、将来の可能性を知る必要がある。どんな職業があるのか、必要な知識や技術は何か、その可能性を叶える為にどういった努力をして、どの道を辿ればそこに辿り着けるのか。こうした夢を叶える為の具体的な方法を知ること。これがマラウイの、特に村の子ども達は手にすることが難しい。テレビやネット、本などの情報を取得できる環境があまりにも少ない彼らは夢を叶える方法を知らないまま一生を終える。それが何代にも続き、今日の経済格差が生まれていると考える。

したがって、私はこれらの情報を獲得する為の場として、キャリアガイダンスという活動を同僚と企画し開催した。これは実際のキャリアを持ち、成功を納めているマラウイの大人達から子ども達へ、生の成功体験や苦難、葛藤、努力、そして職業を手にする為の方法を伝える取り組みだ。マラウイ大学教授(日本への留学経験あり)、教師(教育委員長)、医師(内科医)、警察官(署長)、農業経営アドバイザーの5人の講師を呼んで、ンサナマ村の管轄の小学校(8年制)全15校における6年生以上の生徒を対象に開催した。

内容は全て子ども達に伝わるよう、現地語のチェワ語で行い、自己紹介から職業紹介、そこに至るまでの軌跡を細かく説明してもらった。その後、質疑応答に移り子ども達の疑問や心配を解決していった。静かに見つめ、話を聞く子、ノートを必死に取る子、学習意欲に燃える子、キャリアを持つ大人達をキラキラした目で眺め、憧れを持ち始める子、質疑応答で夢を堂々と語る子、具体的にその夢を実現するために今を大切にしようと努力を始める子など、始まる前とは明らかに違った空気が会場を包み、このポジティブな感情は他の生徒にも伝染しているように感じた。

しかしこの事は、実際に子ども達の内でどう影響を及ぼしていくかはまだわからない。いつの日かこの子達が真の意味で目標を実現し、自分なりの幸せを掴んだ時、私たちのキャリアガイダンスという活動は実を結ぶと思う。それと同時に、その事を願い、支え続ける責任が我々大人にはある。

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生徒の質問に答える大学教授のチョモラ・ミケカさん

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医者になる為の方法をノートにメモする生徒

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ンサナマ村の生徒と講師陣5名、スタッフ2名(左から筆者,農業経営アドバイザー、医師、大学教授、警察官、教育委員長、司会の教員)