マラウイボランティアレポート「理学療法士誕生から8年のマラウイで活動する」

2023年2月3日

名前:新田 唯奈
隊次:2021年度3次隊
職種:理学療法士
配属先:ムチンジ県病院
出身地:福島県郡山市

私は、首都から車で約2時間離れている、ムチンジ県ムチンジにある県病院で活動しています。マラウイに来てから今月で1年が経ちました。

活動としては、配属先である理学療法科で、入院・外来患者に対するリハビリテーションの実施、5S-KAIZENの推進を中心とした運営管理の改善支援、意見交換や知識共有を通した同僚への技術支援などを行っています。

活動を始めて感じたことは、現地の理学療法士である同僚たちの知識が豊富で、仕事に対する熱意が強いということです。マラウイでは理学療法の歴史は新しい(2014年に第1期生が卒業)のですが、大学入試はとても難しく、卒業するよりも入学する方が狭き門らしいのです。これまで数人の理学療法士にこの職業を選んだ理由を聞いたことがありますが、「学年1位で先生に勧められた」「この国では新しく今後発展する分野だから開拓したかった」という返答に驚きました。理学療法士が毎年約1万人誕生している日本と比べて、ここマラウイでは約30人。そんな有数なエリートと呼ばれる同僚たちと働き、彼らのアイディアに刺激を受けながら私自身が沢山学んでいる毎日です。そうして活動する中で、改めて理学療法はこれから発展していく分野だなと実感しています。

それからもう一つ感じたことは、理学療法士の教育と業務範囲が日本と異なることです。マラウイの理学療法士教育は5年+インターン1年の計6年で理学療法士として働くことができます。その中で薬理学(薬の知識)も学ぶのです。また、理学療法士は医師の処方箋無しで治療することができ、患者さんを直接診断できるのです。日本では、理学療法士が直接診断を出すことはできません。そのため、活動初期は、薬の知識が無く驚かれたり、理学療法士として診断を求められたりと、これらのギャップを埋めることに苦労しました。

また、文化や社会背景の違いで感じたこともあります。私が日本でこれまで担当した患者さんは、成人は腰痛や脳卒中、癌疾患、若者はスポーツによる怪我が殆どでした。また、少子高齢化社会であり圧倒的に成人の患者さんが多かったのです。

しかし現在私が治療する患者さんは、6~7割が小児患者(脳性麻痺などの先天性疾患が多い)です。また、自宅での生活様式は日本とは異なるので、生活動作に関するアドバイスなども違ってきます。私の医学英語がままならない上に、同僚の方が現地の医療に基づいた知識が豊富であり、サポートすべき側の私が同僚に意見をもらい、現地語で必死に患者さんに伝える…。

「私は何をしに来たのだろう。どっちがボランティアなのだろう。」

とようやく慣れてきた今でもふと思います。しかし、それでも私なりに現地の同僚たちとともに患者さんの思いに寄り添い、全力でできることをする、それがマンパワーとしてでも、現地の医療と社会活動に貢献するボランティアの1つの形なのだと思いながら、活動を進めています。

残り1年、試行錯誤を繰り返し沢山のことを学びながら、同僚たちとともに楽しくマラウイの理学療法を盛り上げていきたいです。

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パイプを使用し手指装具を作製する同僚と完成した装具

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パイプを使用し手指装具を作製する同僚と完成した装具

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小児患者への理学療法