思い出の一枚「初めての味」

2021年5月27日

名前:浜中 咲子
隊次:2015年度1次隊(2015年7月6日~2017年7月5日)
職種:栄養士
配属先:カスング県立病院
出身地:東京都練馬区

私は、首都リロングウェから北へ約120キロメートルにあるカスング県に住んでいました。配属先は県立病院でしたが、時々近くの小学校で学校の先生たちと活動を行っていました。

マラウイの小学校では、調理実習をはじめ体育や芸術関連の授業でも座学で行うことが多く、なかなか実習授業を行うことが厳しい環境にありました。しかし、調理実習であれば私の経験や知識を元に何かできるかもしれないと、近隣の小学校の校長先生を始め先生たちと話し合い、生徒に調理方法やレシピを教えることになりました。

ある日の授業テーマは「Steaming」で、卵・牛乳・砂糖を使ってプリンを作りました。マラウイでは南瓜など食材を蒸すことはありましたが、生徒たちは料理を作る際に「蒸す」というものも見たことがありませんでした。そのため、家にあるものでどうしたら「Steaming」ができるのか、デモンストレーションを用いて生徒たちの前で実演をしました。

出来上がったプリンを前に、生徒たちは自宅から持ってきたスプーンを先生に差し出し、先生がプリンをすくって、スプーンを返却された人から、こぼれないよう恐る恐る試食をしていました。写真は、初めてプリンを試食した時にこぼれた「笑顔」を撮ったものです。マラウイの日常では出会うことのない「味」と「食感」に生徒たちは「おいしい!」と笑顔で試食をしていました。試食は1人1回と言われているのにもかかわらず2度3度と手を伸ばしている生徒もいました。

隊員の任期を終了してから早4年ほどたちますが、現在はNPO法人ISAPH(アイサップ)のマラウイ事務所で乳幼児の栄養改善プロジェクトに携わっています。その中で私の役割は、マラウイの村人たちが新しく育て始めた食材(にんじん、オレンジスイートポテト、にんにくなど)や、従来からある食材(牛乳、乾燥大豆肉のソヤピースなど)の新しい食べ方のレシピ提案を主に行っています。プロジェクトに携わり始めた時は、ちょうどコロナ禍ということもあり、すぐにプロジェクトサイトに赴任ができていませんでした。しかし、協力隊時代のこの調理実習の活動の経験が、今のプロジェクトにとても活かされていると感じます。

隊員時代、病院での活動がうまくいかなかった時に、一体私は「何ができるのか」と不安と期待を持ちながら始めた小学校での活動でした。しかし、その活動をきっかけに、現在も仕事を通してマラウイの人たちに「初めての味」を届け続けています。

次回は、協力隊でもISAPHでも先輩だった2014年度3次隊の池邊佳織さん(公衆衛生)さんです。マラウイの一つの地域に協力隊とNGOを合わせて4年以上関わった池邊さんがマラウイに対してどのように想いを寄せていたのか私も気になっています!

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