思い出の一枚「たくましい子供たち」

2021年6月17日

名前:冨高 由紀子
隊次:2014年度1次隊(2014年6月30日~2016年6月29日)
職種:青少年活動
配属先:ミトゥンドゥ教師研修センター
出身地:東京都足立区

蛇口をひねれば水が出てくる。それが普通ではない場所では、食事も洗濯もお風呂も、まずは水を井戸から汲んでくるところから始まります。

任地に赴任して間もないある日、家にストックしていた水が底をついたので、水汲みを始めようと準備していると、いつも家に遊びにくる近所の子供達が総出で手伝い始めてくれました。子供達は、家にあったバケツや空のペットボトル、食器洗いや洗濯に使う桶を持って井戸へ走り出しました。取り残されたかのように、3,4歳のちびっこ達は何か私に訴えています。「カーポ!カーポ!!」。最初は何を言っているのか分からず、私も水汲みに行こうとすると、まだ言っています。するとそのうちの1人がそれを手に持って訴えてきました。あ、「カップ」のことね!君たちも水汲みをお手伝いしたいのか!と、私はやっと理解し、普段は柄杓代わりに使っているカップを手渡しました。ようやく水汲みに向かう頃には、2~3年生くらいの子供達が戻ってきました。20リットルのバケツも5リットルのペットボトルも、桶も、いっぱいに水が入っていました。

彼らにとっては、これが日常であること、大人でも運ぶのに苦労する量を、笑いながらいとも簡単に運んでいることに驚嘆すると同時に、自分のひ弱さを感じました。体力には自信がある方だったけれど、それとは違う、生きるたくましさを彼らから感じた瞬間でした。当然1往復では生活に必要な量に程遠く、これを何度も繰り返します。最年少のちびっこ達も、お兄ちゃん、お姉ちゃん達に負けずと真似して繰り返します。幼稚園に行っていれば年少さんくらいのちびっこ達のカップは案の定、井戸から家に戻って来る頃には、水はほとんどありません。頭からびしょ濡れになりながら一生懸命水を運んでくれている姿が、なんとも微笑ましくて、一気に心を掴まれたのを覚えています。

その日に充分な水を大バケツに溜め終えると、子供達はいつも通り我が家の庭で遊び始め、豊かな笑い声と共に、ほっこりした時間が流れ始めました。

次回は、マラウイ湖沿いのモンキーベイで活動されていた2013年度2次隊の池之谷理恵(旧姓野村)隊員(理数科教育)の思い出の一枚です。

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