思い出の一枚「図書室が繋ぐ未来」

2021年6月24日

名前:池之谷 理恵
隊次:2013年度2次隊(2013年9月30日~2015年10月1日)
職種:理科教育
配属先:モンキーベイ中高等学校
出身地:静岡県浜松市

私の赴任先であるモンキーベイ中高等学校は、マラウイ湖から歩いて数分のところにある、小さな学校でした。モンキーベイは1年のほとんどが蒸し暑く、窓がないトタン屋根の古い校舎で教えている時は、体中から汗が溢れ出ました。生徒もぐったりしていて、休み時間には学校にある唯一の水道に長蛇の列ができていました。1日の終わりに飲む冷えたファンタ・パッションがものすごくおいしかったことを覚えています。

任期中にやりたかったこと、そして今もやって良かったと思えることの1つは、壊れた机やイス、掃除道具等が無造作に置かれ、立ち入り禁止の物置状態となっていた図書室を、生徒と一緒に復活させたことです。学校の各学年から男女1名ずつ、本が好きな生徒を集めて図書委員会を結成し、毎週水曜日の放課後に活動しました。生徒と話し合い、どんな図書室にしたいか、レイアウトや利用時のルール等も一緒に考えました。埃をかぶった蔵書、過去の国家試験の問題用紙をきれいにし、貸し出し用にナンバリングをして科目ごとに本棚やファイルに収めました。生徒と一緒に日本から持参した教科書や雑誌を見たり、日本の音楽をかけて(生徒たちの1番のお気に入りはPerfumeでした!)雑談したりしながら作業をして、とても楽しい大切な時間でした。今もあの時間を思い出すと、心が温かくなります。

図書室が使えるようになってからは、毎日約70~80名の生徒が休み時間等に図書室を利用するようになりました。当時教科書は1冊3,000~4,000クワチャ(※約500円)と、一般家庭では買い揃えるのが難しく(そもそもモンキーベイでは売っていませんでした)、生徒は教科書を持っていなかったため、授業中に先生が板書したものを写したノートが教科書がわりとなっていました。そのため、図書室で実際に教科書を手に取り嬉しそうに読んでいる生徒の姿が印象的でした。また、毎日のように図書室に通い、もくもくと教科書を読んでメモを取っていた生徒がいたのですが、その子がモンキーベイ中高等学校始まって以来初めて大学(しかも最高ランクのマラウイ大学!)に受かったと帰国後に聞きました。もちろん、大学の合格は彼の努力によるものですが、彼を始め生徒たちが図書室で過ごすという選択肢を1つ増すことに貢献できたことを嬉しく思いました。

任期終了後、仕事や大学院の研究のためマラウイに渡り、モンキーベイ中高等学校を2回訪問する機会がありました。毎回、先生が図書室へ案内してくださり、図書室で本を読む生徒の姿や、かなり使い込まれた当時の理数科隊員で作成した国家試験の過去問題&解答集を見せてくれました。任期中は、自分がここにいる意味があるのか、マラウイの人々の役に立てているのか、悩むこともたくさんありましたが、帰国後も生徒や先生たちが図書室を保っていてくれたことを知り、諦めずに続けて良かったなぁと心から思いました。

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次回は、マラウイ南部のチョロで巡回医療の支援をされていた2013年度1次隊横内美由紀さん(看護師)の思い出の一枚です。