思い出の一枚「緊張の糸が一瞬でほぐれた珍事件」

2021年7月1日

名前:横内 美由紀
隊次:2013年度1次隊(2013年7月1日~2015年6月30日)
職種:看護師
配属先:チョロ県病院 地域医療課
出身地:北海道 深川市

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初めてのアフリカで、土地柄もわからず日本とは全く違う生活スタイルに不安を感じていた日々、首都での看護師実習を終えて、いざ任地へ。職場ではスタッフの一員としてなんとか早くなじもうといつも必死でした。任地について一か月ぐらいが経ったときに、その事件は起きました。

私の仕事は、車に医療物資を積み込み、各村々に出向き医療スタッフと一緒に巡回診療を行う仕事でした。雨がひどくぬかるみ車をみんなで押し白衣が泥まみれになったり、増水した川を古いロードカーで無理矢理通るなど、毎日ハラハラしながらも、遠いところで片道3時間かけて1日がかりで活動していました。初めていく村では、車から降りる私を見て、子供たちが肌の色が違うことに驚き、一斉に蜘蛛の子を散らすように逃げ出した光景を今でも覚えています。

その日は、任地について一か月ぐらいたった日でした。移動中の車の中では、移動時間が長いのでおやつタイムがあります。悪路の中座席から飛びあがったり、泥埃を巻き上げながらでもおやつを食べます。同僚から「美由紀もキャッサバを食べなさい」と生のまま渡されました。ん?生だよね?と心の中ではかなりの葛藤、でも新しい味の発見があるかもしれないと、皮の剥き方を教えてもらいながら1口、2口。でんぷんを食べているようにしか思えず、おいしさは全く感じませんでしたが、何も言えずその場は、にこやかに談笑しながらなんとか全部食べ終えました。

そして、2時間かけ現地に到着。仕事を始めて30分しないうちにお腹が痛い!!案の定消化不良を起こしたのです。へき地でのトイレ事情は知っていたので、今までなるべく水分は取らずに職場に戻ってからトイレに行くことを心がけていました。でも、どう考えても仕事は手につかず、やむなく同僚にトイレを教えて貰い用を足すことに。

そこは、診療所からちょっと離れたところにあり、あまり人が通らない場所。急いでトイレにかけこみ用を足し終え、ホッとしたところで事件は起きたのです。ん?ん?ドアノブがない?え?でもカチャンって言ったよね?人通りの少ないところだし、しかも急を要していたのでドアノブまでチェックしませんでした。頭をフル回転させ、自分が持っている自宅のカギを差し込むがダメ、携帯電話で同僚に電話するが圏外、まさかおいては帰らないだろうと思っていたけど不安は最高潮。もう恥を忍んで大声で「たすけて、たすけて」と日本語で叫びました。すると5分くらいたって村人と同僚がトイレのドアを開けてくれました。周りには、診療を受けに来た患者さんが大勢。出てきた私を見るなり大笑いでした。それを見て私も恥ずかしさよりも助かった安堵感と、今までの生活の変化や仕事環境の変化で緊張していた糸が一瞬でほぐれ一緒に大笑い。本当にホッとした瞬間でした。あの事件があったからこそ村人やスタッフ(写真)との距離感がぐっと縮まったように思います。今となっては恥ずかしい珍事件にとっても感謝です。

次回は、同職種ということもあり、色々と頼らせていただきました。素敵な笑顔と話していくうちにとジワジワと感じる面白さ、どこをとっても魅力的な2012年度3次隊の香川さん(看護師)です。