思い出の一枚「一悶着あった生徒達が、帰国前に歌ってくれたゴスペル」

2021年9月9日

名前:基彰太
隊次:2007年度4次隊(2008年3月~2010年3月)
職種:理数科教師
配属先:セントジョンボスコ中高等学校
出身地:鹿児島県大島郡

「不満があるなら出ていけ!」現地に赴任してから5ヶ月ほど経った日に、生徒の実態把握すらできていない未熟な私が、生徒達に放った一言です。

私は、マラウイ北部のカテテという地域に住んでいました。その地域の進学校でForm 3(高校2年生)の生徒に対して、数学の授業を2クラス(週10コマ)担当していました。しかし、生徒の進路希望に対して授業の進度スピードが遅れていた為、生徒と面談を行い、補講を週に10コマ持つことにしました。

翌年も持ち上がりでForm 4の数学を担当することになりました。それまで早朝と夜に補講を設けていたのですが、生徒はとても疲れている様子でした。そこで、生徒に補講を続けるか否かを問うと、それまで詰め込み授業を行ってきた事もあり、彼らは今まで溜まっていた私への不満をぶつけ始めました。新学期、1回目の授業では、生徒による授業ボイコットがありました。彼らや同僚とのコミュニケーションをその時まで怠ってきたのだなと、深く深く反省したのを覚えています。

驚いたのは、その後の同僚教師達の迅速な対応です。彼らはその日のうちに、生徒に対しての聞き取りを行い、私に寄り添い、話を聴いてくれました。その後、多くの生徒が正直な意見を私に聴かせてくれ、彼らとの信頼関係が初めて築けた気がしました。それからは、生徒と同僚とのコミュニケーションの取り方が大きく変わりました。

それから、話は私の任期が終了する3週間前まで進みます。生徒達が、進路実現できるか否かを決定する国家試験を受け、結果が出ました。結果は、107人中18人がDistinction(70点以上)をとり、学校創立以来の好成績を生徒達は残しました。校長先生を始め、同僚教師が喜んでいる姿を見ることができ、私も感動したことを覚えています。しかし、希望している進路に必要な結果を残すことが出来なかった生徒もいて、同時に落ち込んだことも覚えています。私は、彼らの学力の弱点や強みは良く把握していましたが、個性に合わせたコミュニケーションが不足していたのだなと反省しました。

この2年間で、私は現地の生徒達から学んだことが多くあります。何を伝えるかではなく、相手の実態に合わせた支援の方法はないか?同僚とチームとしての感覚を強く持ち、生徒に指導することの大切さ。ここで学んだことは、現在の私の教員生活に大きく活きています。

【画像】

ゴスペルの打合せをしている生徒達

最後に、私の任期で最後の全校集会の出来事です。私が生徒との様々な出来事を思い出しながら集会に参加している時に、突然、生徒達がいつもと違う動きを始めました。生徒達は私へのゴスペルを用意していてくれていて、様々な楽器を使い、最高の贈り物をしてくれました。ゴスペルの最中は、生徒達との思い出がどんどん溢れてきて涙が止まりませんでした。ゴスペルを歌っている写真は撮れなかったのですが、ゴスペル準備中に記念として撮った写真があるので、その写真を載せています。

私が経験させて頂いたような有意義な2年間。是非、多くの人に体験して欲しいと、切に思います。

次回は、マラウイ隊のムードメーカーであり、皆のお姉さんだった、エイズ対策で19年度1次隊の森田(旧姓田中)加奈子さんの思い出の一枚です。