思い出の一枚「ペパーニな劇団の思い出」

2021年9月30日

名前:中村雄弥
隊次:2007年度1次隊(2007年6月~2009年6月)
職種:エイズ対策
配属先:ティコレラネコHIVエイズリソースセンター
出身地:愛知県名古屋市

Pepani。「ごめんなさい」「気の毒に」的な意味を持つチェワ・トゥンブカ語の言葉です。2008年、北部ムジンバ県のエイズ対策&医療系隊員を中心に、「劇団ペパーニ」なるグループを結成し、活動した時期がありました。現地のHIV陽性者やエイズ患者に、日常の食事の中に、たんぱく質に富み、肉や魚に比べ安価な「大豆」を取り入れることを勧め、栄養改善を目指す、そういった趣旨の啓発演劇に取り組むのが目的でした。

趣旨に賛同して集まった隊員は、まさに多士済々?看護師や栄養士といった医療経験者のほか、自転車で世界一周した中年男子や、無駄に理屈っぽい元新聞記者、いつも騒がしいテレビディレクターなどジャンルも性格もバラバラな、ある意味多様なメンバーでした。個性的だけど、残念なところも多々ある面子だったので、自虐的に名をpepaniとしました。

脚本は、元新聞記者の隊員(筆者)が、英語で書き下ろしました。要約すると、不摂生だったエイズ患者の男性が、栄養士の指導を受けて食事を改善し、大豆をたくさん食べるようになって、最後は、正義の味方「Soya man(=大豆男)」にパワーをもらって元気になるという話。マラウイアンに助言をもらいながらトゥンブカ語に訳しました。ちなみに筆者は、自然な流れでSoya manを演じることになりました。

【画像】

劇団ペパー二の仲間たちと

公演場所は、病院や患者支援の施設等でした。毎回人だかりの大盛況。が、予想通り、役者はトゥンブカ語のセリフを覚えられず、本番もカンペ頼みで、グダグダな進行…。それでも、吉本新喜劇的なオーバーアクションは観客受けも良く大いに盛り上がりました。しかし不思議なことに?劇も最高潮となり、締めとして、Soya manが颯爽と舞台に登場すると、毎回、場が急に凍り付いて、しーんとした空気に包まれました。どうも戦隊ヒーロー的な存在がよく理解されていないようで、みな呆気にとられた感じ。上半身裸になって、妙なハイテンションで走り回って登場するSoya manの痛さといったら、思い出すだけで冷や汗です(笑)。

時は流れて、あれから13年。筆者は、長野県小川村で未だにSoya manをやっています。何の因果か、地域おこしを目的に「だいず食堂パチョコ」という名の、大豆をテーマにした飲食店を営んでいます。昔の演劇の内容や、大豆に関する知見の浅さを思い返すと、まさに「pepani」としか言えません。いつか縁あれば、マラウイを再訪し、pepaniじゃない本物のSoya manとして、大豆料理の普及活動に再び携わりたいと考えています。

次回は、マラウイで子どもたちにたくさんの遊びを教えていた、18年度3次隊竹中成行隊員(木工)の思い出の一枚です。