思い出の一枚「少年が教えてくれたWarm Heart of Africa」

2021年12月23日

名前:大木 奈美(おおきなび)
隊次:平成11年度1次隊(1999年7月~2002年2月)
職種:獣医師
配属先:チョロ獣医事務所
出身地:埼玉県さいたま市

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話しかけられて照れるLovemore少年

最高の思い出が多すぎて1枚だけなんて選べない。そう思ったもののやはりマラウイらしい話と言われて真っ先に思い出すのは、この写真の少年、Lovemore(当時5歳)の言った言葉だ。任期の終わりが近づき、どうやったら日本に帰らずにマラウイで暮らせるか…なんて職場の友達との悪だくみも虚しく、帰国が目前になったある日、水道局に勤める友達のルカが「お別れの夕飯をうちで食べないか?」と持ち掛けてきた。当時、もちろん電子マネーなんてなくて、水道代は毎月水道局に払いに行っていた。当然このルカとは毎月会うので顔馴染みになり仲良くなって2年が経っていた。「ありがとう!行くよ!」二つ返事でおよばれすることに。外人の私が家に来て夕飯を食べるなんてビックイベントらしく、子供二人が大興奮でまとわりつく。しかしルカのしつけが厳しいのかバカ騒ぎはしない。こぼれそうなキラキラした瞳で話しかけられると1人位日本にお持ち帰りさえしたくなる。食事が終わって次男のLovemoreが私の膝に手を置いて目を覗き込んでこう言った。「ナビ、手を出して」言われるがまま広げた私の手のひらにLovemoreが1クワチャ硬貨を5枚乗せた。当時1クワチャでバナナが1本買えた。5歳の子供にとっては全財産であろう。「どうした?Lovemore?なんでくれるの?」と尋ねると、「…パパがね、ナビは遠い日本って所に帰るって言ってた。すごく遠いんでしょ?だから…途中でお腹すいたらこれでバナナを買って食べてね」と答えた。何て綺麗で真っすぐで温かい心を持っているのだろう。今、これを書いていても彼の純真さに泣きそうになる。人間より動物が好き、だから私は獣医になった。マラウイに来るまでやっぱり人間より動物が好きだった。しかし5歳の少年のこの言葉に「人間が好きじゃないなんて、なんて思いあがった心だったんだろう」と気づかされた。Lovemore、君のWarm Heart of Africaは私に大事なことを教えてくれたよ。ありがとう。もちろんこの5クワチャはバナナを…買わずに私の実家の机の引き出しに今も大切にとってある。

次は、平成10年度1次隊、私とは番犬をシェアした仲でもある愉快な自動車整備隊員だった浅野健さんの思い出の一枚です。