思い出の一枚「The shadow of the brilliant」

2022年1月28日

名前:浅野 健
隊次:平成10年度1次隊(1998年7月~2000年7月)
職種:自動車整備
配属先:農業灌漑省 ブランタイア農業開発局 チリンバワークショップ
出身地:千葉県

獣医師隊員OVの大木奈美さんからこの投稿のお話を頂いた時は、正直迷いました。何故ならば私、文章をすらすらと書くのが超苦手。でも引き受けてしまったのは、やはりマラウイが好きだから。そして忘れやらぬ思い出がぎっしりだから、マラウイと聞くと知らんぷりはできないのです。

しかし何をどう書けば良いものか、案の定筆は進まぬ。焦りを感じながらペンを持つも寝落ち、そして夢をみた。舞台は勿論マラウイ。私は空港から白タクを拾って街に向かっている。ドライバーは若い小柄なマラウイ人、軽口を叩いて水色のマツダファミリアを飛ばす。結構なカーブなのに全然スピードを落とさない、グラブレールを掴む手に力が入る。ボロいファミリアはサスペンションは抜けてるしツルツルタイヤ。激しくロールしてキキー!遂にカーブを曲がり切れず崖に落ちかけて何とか止まった。傾いた車から這い出て崖をよじ登り振り返ると、道端に居た物売り達がうわーと集まり車を押してあっという間に崖から脱出。Sir!とドアを開け、何事もなかったかのように再び乗れと言うドライバー。あのねー!!

突然夢の話で恐縮でしたが、この様な光景は実際私がマラウイで見たり体験したりしたものから起想されていると思います。バイクを貸与され通勤していたので、実際に路上で沢山の事故を見ました。私は自動車整備隊員として農業灌漑省の整備工場に配属されていました。整備工場には常に何台もの事故車があり、ほぼ放置状態。板金塗装の技術や施設もない、何より予算がない。省庁なので比較的新しくて立派な車が多いのに、ドライバーの技量やメンテナンス設備が全く追いついていない状況でしたね。そんなちぐはぐ感にジレンマを感じつつも、限られた環境の中で最大限に効果を引き出す方法を考える日々でした。日本の恵まれた環境に居た整備士には新たな気付きも多く、目から鱗の連続でした。

何となくネガティブな側面に浸ってしまいましたが、それは、最も悲しい記憶に起因します。マラウイに赴任間もない後輩隊員が徒歩で道を横断中ミニバスと接触、交通事故で亡くなりました。現場は私の住むフラットから直ぐです。前日にドミトリーで会ってるし、カールスバーグを一緒に飲んだし。自動車に関わる隊員として何も出来なかったやるせなさ、忘れる事ができません。

自動車を悪者にしているのは人間です。ハードウェア、扱う人間のソフトウェア、そしてインフラの三位一体、相互意思疎通を通したバランスの良い関与によって国際協力がなされ、マラウイだけではなく、世界の悲しい交通事故ができる限り無くなる事を願います。

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チリンバワークショップ

次回は、博学でお茶目なひげのパパ、9年度1次隊、加藤和宏隊員(建築)の思い出の一枚です。