思い出の一枚「教室に大きなトップライト」

2022年2月3日

名前:加藤和宏
隊次:平成9年度1次隊(1997年7月~1999年7月)
職種:建築
配属先:公共事業・供給省(建設省)南部地区管理局建築課
出身地:山形県上山市

公共事業・供給省の出先機関である南部地区管理局はブランタイヤにある。旧首都ゾンバの隣町で、リンベを含めて国一番の人口100万都市であるブランタイヤにはドミトリー併設のJICA事務所があり、首都リロングウェより活気ある大きな街であった(今はどうかな?)。
赴任前の現地訓練の最終日はホームステイを併せここであり、ここから新隊員は任地へ旅立っていったものである。

ブランタイヤには「マラウイ(工科)大学」がありこの国唯一の建築学科が設置されている。建築関係教育機関としては最高学府となる。大学からの要請により、建築課の次席であるJOCV(私)が講師として派遣されることとなった。紆余曲折はあったが、従前から講師をされていた建築課長のほかにもう一人となったもの。
担当は1年生。教科は「意匠」と「計画」。2科目、週に2時限の講義(演習)である。1年生とはいっても18歳から30歳までいろいろ。大分歳が違うが、お金を貯めてから受験ともなれば仕方なしか。お金持ちの子弟でなければ現役で大学へは入れぬ。働いて学資を稼がねば大学へは入れぬ。奨学金制度などこの国にはない。

鉛筆、定規等製図用具は大学から貸与される。教室には製図台が並び、学生たちは教室でしか図面を引けぬ。自宅に製図板(台)などない(買えない)。教室で目一杯図面を引く。

【画像】

大きなトップライトの下で学ぶ学生たちと

教室にはとても大きなトップライトがある。そこから降り注ぐ光の下での製図である。マラウイ一番の大都市とはいっても、計画停電を含め頻繁に停電する。停電すれば暗い。暗ければ細かな線は引けぬ。
何という工夫か。エコロジーの極みである。停電しようがしまいが均一の光の下で勉強できる。とても感心した瞬間であり、「日が昇れば起きる、日が落ちれば寝る」というマラウイ人の生活習慣がここにもあったことを認識し、感心しきり。

セカンダリースクール(中・高等学校)でDesignの概念を教えてもらっていない、定規も使ったことのない学生たちに説明するのには苦労したが、皆一所懸命である。

授業のある日の夕刻は学生達とカニャニャ(焼肉屋台の露天飲み屋)。呑むし喋るしみんな明るい。明日のマラウイの建築界を担う者たちである。
彼ら彼女らに幸あらんことを願うばかりである。

次回は、任期中の2年間"マラウイだより"を発行していた、平成6年度1次隊 大西寛さん(理数科教師)の思い出の一枚です。