思い出の一枚「忘れられない、忘れてはいけない患者さん」

2022年3月24日

名前:芳賀 晴章
隊次:平成3年1次隊(1991年7月~1994年7月)
職種:歯科医師
配属先:ゾンバ総合病院(ゾンバ)、クイーン・エリザベス中央病院(ブランタイヤ)
出身地:東京都

私はゾンバで2年間、延長して1年間ブランタイヤで歯科活動をしてきました。虫歯、歯周病の治療はもちろん、外科的な治療も多く、外傷、炎症、腫瘍など日本にいたらほとんど診ることのない患者さんを多く診させて頂きました。

思い出の一枚はゾンバ総合病院の歯科に赴任して間もなく受診された妊婦の患者で、虫歯が原因で下顎から側頭部にまで及ぶ膿瘍でした。あまりに異常な顔の腫れに驚愕と恐怖を覚えてしまいました。日本でも経験はあるが、こんな腫れ方をした患者さんは初めて、ましてここはマラウイと不安が強くなり治療方針に戸惑っていると、Dental Attendantのマルンダさんに「Doctor, Doctor You’re Only.」と喝をいれられました。「自分しかいないんだ、やるしかない」と自覚し覚悟を決め治療に臨みました。原因歯3本の抜歯と口腔外から切開し排膿させる消炎処置を施行しました。術後経過は良好で一週間後に無事男の子を出産し退院されました。写真は退院後赤ちゃん(Mabvuto君)と外来受診された時のものです。このとき二つの命があったことを再認識、本当にほっとしました。これを機に任期までやってやると覚悟ができました。Dentalスタッフたちに助けられ2年間診療をすることが出来ました。後任の先生が決まらず1年間延長を申請し、決まったところでブランタイヤのクイーン・エリザベス中央病院へ飛ばされてしまいました。日本へ一時帰国後、残り1年新天地ブランタイヤでの任務にあたりましたが、自分の臨床経験で出来ることを精一杯やるだけでした。

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この3年間、歯科医師と患者という関係ではありましたが、多くのマラウイの人たちと出会うことが出来、患者さんやその家族と接していくと、言葉の壁はあったもののその地方の生活環境などを知る事も出来ました。地方の村から遙々やって来る患者さんほど、特にお年寄りや子供たちはとても素朴で、治療後に感謝されると、微力ではあるが協力しているのだと実感してしまいました。とても貴重な経験をさせて頂きました。

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最後にDAのマルンダさんは、私が推薦したのですが、日本の大学歯学部口腔外科で研修中、病に倒れ無念の途中帰国となり、その後間もなくお亡くなりになられ非常に残念でなりません。マルンダさんは、素晴らしいDental Nurseでした。Big Smileに感謝。

次回、最終回は、任期5年1か月の最長記録を持つ昭和55年度1次隊後期組 吉田均さん(上下水道)の思い出の一枚です。