所長あいさつ

マレーシアと日本の国際協力は、1956年にマラヤ連邦から技術研修員を日本に受け入れたことに始まり、60年以上の実績があります。JICAは日本の政府開発援助(ODA)の実施機関として、「東方政策」による日本への留学・研修をはじめ、技術協力を通じた海上保安や環境といった分野での人材育成、クアラルンプール新国際空港やマレーシア日本国際工科院(MJIIT)に代表される資金協力によるインフラ整備、青年海外協力隊による草の根の活動などの実施を担ってきました。2021年度末までにJICAを通じて受け入れた研修員(留学生含む)は18,813名、マレーシアへ派遣した専門家は4,465名、協力隊員は1,563名、円借款供与実績は累計9,238億円にのぼります。

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目覚ましい成長を遂げていたマレーシアの経済・社会は、コロナ禍により大きなダメージを負いましたが、2023年に入り復活の兆しを見せています。マレーシア政府は、2019年にビジョン2030を発表し、公正かつ公平な分配による持続可能な成長を目指しています。JICAはマレーシア政府の成長戦略および日本政府の開発協力方針を踏まえ、(1)「公正かつ公平な分配による持続可能な成長」実現のための協力(教育、環境などの分野での政府関係機関の能力強化)、(2)地域の共通課題への対応(海上保安、税関など)、(3)地域を越えた日・マレーシア開発パートナーシップの強化を推進していきます。

これまでの協力を通じて、両国の間には、日本をよく知るマレーシア人とマレーシアをよく知る日本人の分厚いネットワークが築かれており、様々な協力・交流を推進していくうえで両国にとって大きな財産となっています。このような信頼関係を基に、技術や知恵を持つ企業や大学・研究機関、NGOなど多様なパートナーとの協力関係をさらに強化していきます。また、双方の知見・経験をアジアや中東、アフリカの国々に伝えていく南南協力も拡充し、相互理解・相互信頼に基づく国際協力モデルをマレーシアから発信していきたいと考えています。

ASEANと日本は2023年に友好協力50周年を迎えました。JICAのビジョン「信頼で世界をつなぐ」のもと、マレーシアの発展と両国および日ASEANの友好関係深化のための架け橋となるべく尽力して参ります。みなさまのこれまでのご理解とご協力に感謝しつつ、これからも引き続きよろしくお願い申し上げます。

2023年5月
JICAマレーシア事務所長
菅原美奈子