ひろばニュース

「国際緊急援助について考えるセミナー~トンガ火山噴火・津波災害を例に~を開催しました。

2022年2月10日

トンガでの火山噴火・津波災害を受け、国際緊急援助について考えるセミナーを開催しました。

トンガでのJICA海外協力隊活動経験を有するJICA中部のスタッフが、市民の皆様から寄せられた「トンガについて何かできないか」という声に応えるため、トンガの支援について考えるセミナーを企画しました。
セミナーはヌシさんが紹介されたトンガの習慣であるお祈りとともに始まりました。前半では「国際緊急援助隊の援助体制やそれぞれの役割、援助のプロセス」を主題とし、海外で大規模災害が起こった際の日本の支援と役割について、また開発援助と人道支援の連携の可能性や限界について説明し、後半ではトンガについての概要をそれぞれ3名から話を聞きました。

【スピーカー】
酒本和彦(JICA中部市民参加協力課長)
タウモエペアウ シリベヌシィさん(豊田自動織機シャトルズ愛知)
世古英弘(JICA中部企業連携課/JICA海外協力隊経験者)
前田大志さん(オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院/ JICA海外協力隊経験者)
【司会】
江口由希子(JICA中部市民参加協力課/ JICA海外協力隊経験者)

国際緊急援助隊の援助体制やそれぞれの役割、援助のプロセス

酒本和彦(JICA中部市民参加協力課長)

今回の災害では海底ケーブルの損傷によりインターネット、携帯ネットワークの復旧中で現地の状況が得られにくく、特に首都のあるトンガタプ島といくつかの島での被災状況しか分かっていないことを説明したうえで、トンガを取り巻く火山帯や被害状況を伝えました。更に日本の国際緊急援助隊の種類と役割、及び緊急援助物資供与や緊急援助隊の派遣プロセス等について説明、加えて開発援助と人道支援について、自身の経験を基にその違いや連携の可能性および難しさについて話しました。変容する人道支援のニーズや開発援助課題と人道支援ニーズが重複する領域が広がってきており双方の連携の重要性が高まってきていることを伝えました。新たなニーズに対応した新しい働き方はまさに、自身の現場経験から培われた視点であり、学びの多い内容でした。

トンガ王国とは?

タウモエペアウ シリベヌシィさん(豊田自動織機シャトルズ愛知)

トンガについてのお話は、3名のスピーカーをお迎えしました。
1人目はタウモエペアウ シリベヌシィさん。元トンガ代表のラグビー選手で日本在住17年目のトンガ人です。ラグビー留学生として来日し、関西地方の大学に在籍されたことから 関西弁が堪能です。
日本とトンガの繋がり、トンガの概要や、国民性・文化、家族や人と人のつながりなどトンガの特徴等の説明があり、今回の災害で被害が大きかった、離島生活の様子にも触れました。トンガと日本を強く繋ぎたいという、熱い思いを持っている方でした。

トンガでのJICA海外協力隊活動 防災・そろばん

世古英弘(JICA中部企業連携課/JICA海外協力隊経験者)

続いて世古さんです。2012年~首都のヌクアロファでコミュニティ開発隊員として、トンガの国家緊急災害管理事務所に所属し、主に防災に関する活動に従事していました。派遣当時のトンガは世界災害リスクランキングで第2位であった事から、日本の災害経験を基に、地域住民主体の防災計画や体制づくりの支援要請を受けて着任しました。近隣国やキリスト教系支援団体等の体制が既にあった事から、新たにトンガ版「稲むらの火*」を作成し、小学校などでの啓発活動をしたそうです。
*1854年の安政南海地震津波に際して濱口梧陵がとった行動により多くの村人の命を救った実話

前田大志さん(オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院/ JICA海外協力隊経験者)

最後は前田さんです。2度のトンガへの派遣経験があり、2020年3月までヌクアロファで珠算隊員として活動していました。トンガ国民の大半が敬虔なキリスト教徒であるため、活動期間中トンガ人を理解するために かなり教会に通ったそうです。食べ物をシェアする習慣や教会の役割についてお話いただきました。また、海底火山噴火・津波災害発生後に現地の元同僚や友人から聞いたトンガ被災状況、復興状況やコロナの影響について紹介いただきました。

トンガへの支援

JICAでは、個人からの義援金やその他の支援の申し入れについては対応しておらず、本セミナーも義援金募集を呼びかける趣旨で開催していません。ただ、トンガの国民性や特性、文化を知っている私達協力隊経験者が、今回のトンガでの災害に対して行動したいと考えている市民の皆さんに伝えられることがあると思い、本セミナーを開催しました。コロナ禍での災害支援でもあり、現地には様々な課題がありますが、引き続き関心を持ち、トンガの人たちがそうであるように、何かあれば自分の時間を割いて、仲間・家族として助け合うトンガの精神を受け継ぎ、息の長い支援を考えていきたいと思います。
コロナ禍での災害でもあり、現地には様々な課題があります。今回のセミナーをきっかけに、引き続き多くの方がトンガへ関心を持って頂ければ何よりです。
そしてトンガの人たちがそうであるように、何かあれば自分の時間を割いて、仲間・家族として助け合うトンガの精神を受け継ぎ、息の長い繋がり、自分ができることを考えていければと思います。

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