所長あいさつ

2022年11月1日、JICAニカラグア所長として着任いたしました。

ニカラグアの地を訪れるのは、2007~2010年に中米5カ国で展開された「看護基礎・継続教育強化プロジェクト」の調査団で初めて訪問して以来12年ぶり2度目となります。

ニカラグアは勤勉な国民性と肥沃な土地を擁し、伝統的に農牧業、鉱業セクターを中心に、米国や中米諸国への資源供給地として重要な役割を果たしていますが、国民の4割以上が貧困層に属し、中南米地域においては2番目の貧困国、かつ国内格差の度合いを示すGINI係数を見ても世界で18か国目に格差が大きい国であり、まだまだ多くのニーズが山積しています。この国の歴史を振り返ると、16世紀初頭のスペインによる征服、19世紀におけるスペインからの独立後もニカラグア国民同士の内戦の歴史も繰り返されてきました。これら人為的影響のみならず、幾度となくこの国を襲う大地震や台風などの自然災害によって、常に外的な脅威を受けていますが、いかなる環境においても、ニカラグア国民は自身と家族、町の復興と発展のために日々力強く生き抜いています。

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JICAは、1964年に農業分野のニカラグア人研修員を日本で受け入れて以降、これまで2,200名以上の研修員が日本の経験や技術を学んできました。また、1970年には水産分野の日本人専門家をニカラグアに派遣して以降、農業や保健医療分野を中心に670名以上の日本人専門家が、ニカラグアの各分野の専門家に対し技術移転と交流を行ってきました。1990年代には、保健医療、教育分野などの基礎的社会ニーズへの協力を技術協力プロジェクトなどを通じて重点的に展開したほか、1991年にはボランティア派遣も開始しました。2000年代以降はこれら協力に加え、上水道整備など都市化や地方開発への対応、また防災、エネルギー分野といったニカラグアの多様化するニーズに対し、インフラ整備とともに人を通じた技術協力を組み合わせた協力を進めています。

熱帯気候の大自然の恵みがもたらす海、山、湖などの観光地、コーヒーやカカオ、牛肉などの高品質な農産品、地熱や水資源等の再生可能エネルギー、太平洋・大西洋両岸へのアクセスなど、国の発展に欠かせない多くのポテンシャルを有する国です。そして何よりニカラグア国民が、発展の源として静かに力強く生き抜いており、私共JICAとして、ニカラグア国民のために、両国の力を結び合わせて、経済社会開発、環境、防災などの分野で支援を継続して参ります。

ニカラグア事務所長
小谷 知之