市場志向型農業振興研修を開催

2020年11月2日

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パキスタンの小規模農家は、農作物のマーケティングシステム、需要と供給に関する情報が不足している中、農業を、意欲のわくような収益性の高い生計手段にできず、苦労しています。農民と消費者の間が分断されていて、農民が自分たちの農業技術を調整したり、新しい知識と技能に適応し、最終的に消費者の満足いく新しい農産物を開発することができず、革新的な取り組みは困難です。これは、ハイバルパクトゥンクワ州の農業普及局長のムハンマド・ウザイル氏による感想です。

COVID-19の感染下、JICA帯広はSHEP研修をオンラインで開催し、南アジア地域からはバングラデシュ、ブータン、ネパール、スリランカとパキスタンから参加しました。パキスタンからは、この研修プログラムには、国家食糧安全保障研究省、パキスタン農業研究評議会、カイバル・パクトゥンクワ州農業局の5人の政府職員が参加しました。この2週間の「市場志向型農業振興研修」は、小規模農家のエンパワーメントプログラムを表す「SHEP-Smallholders Horticulture Empowerment and Promotion」アプローチに基づいて設計されました。このアプローチは、JICAが当初ケニアで一連の技術協力プロジェクトを通じて開発したものです。ケニアでの成功後、「SHEP」アプローチは、ネパールやバングラデシュを含むアフリカや南アジアの他の多くの国々で推進され、小規模農家の収入を大幅に増やすのに役立ったことがわかりました。「SHEP」アプローチの総論は、農民間の情報格差を最小化するという経済概念「情報の非対称性の緩和」と、農民を動機付けるツールとしての「自己決定理論」に基づいています。このアプローチにより、農民は「育ててから売る」段階から「売るために育てる」段階にシフトし、独立性と自信をより大きく持たせ、農業経営に関する意思決定に十分な能力が育まれるようになります。

最初の週(10月12日~16日)は、参加者は「SHEP」アプローチの基本的な理論と、JICAによるアフリカ諸国と日本での実施状況を学ぶ機会となりました。また、それぞれの参加者の国の農業と農民の状況について考え、双方向のセッションや国のプレゼンテーションを通じて経験を交換しました。最終日に、パキスタンからの参加者は、「SHEP」アプローチを導入して、パキスタンで普及サービスの質を改善し、新しい知識とスキルに関して農民への適応率を高めるのに役立たせ、これにより彼らの収入と生計向上に貢献したいとの感想を述べていました。