第三国研修「エコシステムベースの参加型流域管理」(2020年度・第3回研修実施報告)

2020年12月10日

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2020年度オンライン研修

2020年11月16日から20日まで、パナマ環境省が主催する第三国研修「エコシステムベースの参加型流域管理」が実施されました。本研修は、過去26年に渡り日本とパナマが環境保全分野で実施してきた協力の成果を中南米・カリブ諸国(参加対象国)に伝え、各国の流域管理人材の能力強化により域内の生態系保全と持続的な流域管理活動のための普及体制の確立を目指すものです。

例年、パナマに各国の研修員を招き約2週間の講義やサイト視察を行っていますが、今年度は、コロナ禍による国際便の停止等も相まって、パナマにおける研修の実施が困難な状況でした。しかし、今年度も他国研修員を対象とした研修を実現したいという熱い思いから、5日間集中型の遠隔研修が実現しました。

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開講式の様子

今回の研修には、中南米・カリブ諸国で流域管理や生態系保全に携わる政府機関、大学、研究機関、NGOなどから計10か国(エクアドル、ボリビア、コロンビア、コスタリカ、キューバ、パラグアイ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマ)、25名が参加しました。

研修初日に行われた開講式では、パナマ環境省コンセプシオン大臣から、コロナの状況下において、安全対策を講じながら環境保全への取組みを継続的に行ってきた各国関係機関の働きに敬意の意が示され、環境分野における日本・パナマの20年以上にも及ぶ協力について紹介するとともに、研修員による研修を通じて得た知識や経験の共有・展開への期待が示されました。また、JICAパナマ事務所石丸所長からは、各国研修生の参加を歓迎すると共に、「同国における第三国研修の開催は、パナマ及び日本の二国間協力の賜物であり、パナマでは運河の管理や運用は物流や経済の要衝となっているため流域管理は重要な課題である一方、適切な管理を実施するには、周辺環境や住民等のアクターの参加がとても重要である。講義では、20年以上に渡り実施された森林保全、流域管理、参加型村落開発に関する過去の協力アセットやグッドプラクティスが集約されており、各国の研修生同士でこの知見を共有する場にしてほしい。」と述べました。

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環境省の講師が講義を行っている様子

研修員は、5日間で「パナマにおける流域管理」「住民参加型アプローチ」「環境教育」「沿岸海洋生態系管理」「水安全国家戦略」等に係る15コマの研修を受講し、また7つのバーチャルサイト視察を実施し、最終日には、研修員から研修終了後のアクションプランにつき発表がなされ、また研修講師や他国の研修員仲間からのフィードバックも行われました。

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SINAPROCによる講義の様子

その他、中南米の地域国際機関枠組みを通じた初の技術協力「SICA(中米統合機構)地域における生物多様性の統合的管理と保全に関する能力強化プロジェクト」の大澤正喜チーフアドバイザーによる講義や、中米6か国で実施された「中米広域防災能力向上プロジェクトフェーズ2」のカウンターパートであるSINAPROC(パナマ国家市民保護システム)による講義を通じて、研修員たちは国境を越えた、また組織横断的な流域管理手法の実践について学びを深めました。

また、今回の研修では過去に研修に参加したグアテマラとパラグアイの研修員も講師として登壇し、帰国後のアクションプランの達成状況や、パナマでの学びを各国の状況に適用させるための工夫、成果について共有がなされ、報告内容に関し研修員間で非常に活発な議論が行われました。

環境保全や水の安全保障の観点から、流域管理は世界規模で非常に重要な課題です。JICAはこれからもパナマ及び中南米地域の持続的な統合流域管理体制の確立・普及を目指すべく、研修員や関係機関の活躍を支援していきます。

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環境省職員による講義の様子

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グループディスカッションの様子

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環境省職員が研修の進行を行う様子

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情報通信支援員が常駐しモニターする様子