正確、迅速な食肉衛生検査を目指して-モバイル情報システムの開発

2022年9月20日

国立家畜品質・衛生機構(SENACSA)は、パラグアイにおける家畜衛生及び動物由来産品の安全、品質向上を一元的に管理、運営する独立行政法人であり、同機構の管理運営能力向上は同国の牧畜産業の発展のために極めて重要です。当プロジェクトで家畜疾病の診断技術や衛生管理体制の現状を調査分析したところ、食肉処理場に配置されている食肉獣医検査官(IVO)の検査データ処理に課題が確認されました。

全国に約200名配置されているIVOは、と畜前の家畜の臨床検査に始まり、と畜後の内臓や肉の検査を経て食肉として搬出するまでの一連の工程における衛生的管理をすべて担っており、食の安全を支えるとともにパラグアイの主要産業の一つである畜肉等の輸出促進や品質向上、信頼性確保にも寄与しています。したがって、彼らの検査データの適切な処理は重要ですが、各種検査や確認事項の記録は、多数の帳票様式に手書きされているため書き損じや汚損、また各帳票の記入項目の重複もあり、その記録作業が物理的にも時間的にも業務を圧迫しているのが現状でした。また、同検査結果は、家畜生産者が飼養衛生管理を向上したり、何らかの問題が生じた場合の畜肉等のトレサビリティにも有益なものですが、デジタル化されておらずSENACSAの他局にある情報システムとの連携がないため、有効活用されていません。

それらの課題を解決するため、まずは検査帳票をデジタル化し、検査結果の効率的な入力を実現します。また他システムとのデータ連携を図り、検査結果をデータベース化します。適切なデータ管理を行うことで、IVOの業務効率化、引いてはSENACSAの情報システム運営体制の強化を目指すこととしました。

今回のシステム開発にあたってはIVOの業務において特に優先度が高いものを抽出し、対象家畜をパラグアイの主要家畜である「牛」に、また食肉処理場も「輸出用」に限定することにより、業務効率化に直結するデータ処理を先行させることとしました(2021年は、約327,000トンの牛肉を50か国に輸出)。また、食肉処理場内という業務環境に対応し入力作業の簡便化、迅速化を達成すべく、タブレット端末等でも使用でき、ユーザーフレンドリーなモバイルシステムを採用しています。なお、計画段階から関係職員との打合せを重ね、開発後も共に各食肉処理場での活用状況をモニタリングし、必要に応じた調整、改善に協働することにより、SENACSAの同システムに対するオーナーシップ醸成及びシステムの継続的な利用促進を図ることとしています。

同システムは3月に完成予定ですが、今後開始する技術協力プロジェクトにおいても「動物由来産品の検査・分析サービスの質向上」は案件目標の一つであり、検査・認可業務のデジタル化も含め引き続き支援する計画です。生産者らに対する速やかな検査データのフィードバックやその検査結果を活かした飼養衛生管理の向上等、SENACSAの「家畜衛生対策」との連携、引いては民間を含めた組織間の情報共有という観点からも、同システムのさらなる活用、展開が期待できると考えています。

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食肉処理場で衛生検査にあたるIVO

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モバイル情報システムの初期画面