ペルーで活躍する日系人 インタビュー

フリオ クロイワ 博士(故人)

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ペルー国立工科大学名誉教授。日本で地震工学を学び、ペルーにて半世紀以上地震津波被害の軽減の研究、及びコンサルティングに従事し、ペルーにおける地震分野研究の第一人者。

1970年のペルー北部大地震における日本からの調査団受け入れ、「日本・ペルー地震防災センター(CISMID)」の初代所長としてプロジェクトの成功に貢献し、日本の対ペルー防災協力を50年近く支えて頂きましたが、2019年7月にご逝去されました。クロイワ博士の功績に心からの敬意と哀悼の意を表します。

経歴

1936年4月生まれ 日系2世
1963年 国立工科大学
1971~2007年 KUKOVA社 減災技術開発部長
1975~1976年 JICA研修「地震工学」に参加
1980~1988年 国際地震工学会(IAEE)理事(2004年以降、名誉会員)
1986~1989年 国立工科大学日本ペルー地震防災センター(CISMID)初代所長
1996年 カリフォルニア工科大学 土木工学修士号取得
2010年 ペルー国際災害危機軽減会社 理事兼本部長
2019年7月 ご逝去

業績

国連笹川防災表彰(1990年)、濱口梧陵国際賞(2017年)。130以上の科学技術論文、5冊の書籍、3つのマニュアルを執筆。2004年に研究活動の集大成として「Disaster Reduction-Living in harmony with nature」(邦題「減災:自然と共生しながら」)を執筆し、2005年の国連防災世界会議にて公式に紹介される。

インタビュー要旨

Q.CISMIDの初代所長を務められ、JICAからどのような支援を受けましたか?

日本から地震の調査・研究に必要な最先端の機材を頂きました。また、各工学分野の日本人専門家が派遣され、多忙の中3-4ヶ月ペルーに滞在し、理論面のみならず、実技面も指導頂き、最新の知識・技術を移転頂きました。日本の支援なしでは、今のCISMIDは存在していない。

Q.これまでの津波分野での貢献が評価され、2017年に濱口梧陵国際賞を受賞した感想は?

受賞は非常に重要なことです。高齢にも関わらず、和歌山と九州における避難訓練等の視察に招待してくれ、大変勉強になりました。

Q.今後、どのようにペルー津波防災に貢献していく予定ですか。

1746年に発生したリマ沖地震では、津波によりカヤオが壊滅的な被害を受けました。現在、カヤオ港はペルーの商業・流通拠点となっており、カヤオ港の防災を強化する必要があり、カヤオ港防災強化に向けて取組・提言を行っています。

Q.ペルーは地震多発国であり、日本の知見や教訓をどのようにペルーで生かすことができますか?

1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災等の経験では、被災後に給水が止まり、特にライフラインの危機管理体制を強化する必要があります。リマ上下水道公社(SEDAPAL)に対して、危機管理体制の強化を提案し、停電しても1千万人のリマ市民に水が供給できるよう、多数のポンプを購入済みです。また、(2011年の東日本大震災の際、小中学生が高台に避難して津波の難を免れた)「釜石の奇跡」が示したように、脆弱地域に住む貧困層をはじめ、防災教育が重要であり、今度ペルーでも防災教育を普及していく必要があります。更に、災害後には、「より良い復興(Build Back Better)」が重要であり、将来の被害軽減のため、防災の視点を取り入れた復興を行うことが重要です。