【ペルーJICA海外協力隊派遣40周年記念インタビュー】vol.3 吉野 高幹 隊員

2020年9月14日

ペルーJICA海外協力隊派遣40周年を記念し、歴代隊員にインタビューを実施しました。

氏名:吉野 高幹
配属先:国家自然保護区管理事務局(SERNANP)イキトス事務所
隊次:2016年度3次隊
任地:イキトス
職種:環境教育
派遣時期:2017年1月~2019年1月

1.ペルーの印象について教えてください

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パカイヤ・サミリア国立保護区内にあるボリバル集落で実施した環境教育のワークショップ。集落には電気がないので、材料を手作りして、ゴミが自然分解されるまでの年数を考えるゲームとゴミが生態系に与える影響を写真や描いた絵を見せながら説明している様子です。

ペルーに着いて、初めに感じたことは意外と発展しているということです。ボランティアで来る前はマチュピチュの影響もあり、山や遺跡の多い国という印象でした。しかしながら、首都のリマは海沿いに面した非常に大きな街で、立ち並ぶ高層ビル、大きなショッピングセンターやおしゃれなレストランに驚いたことを覚えています。初めて食べたご飯はポジョ・ア・ラ・ブラサと呼ばれる鶏肉の炭火焼きで美味しかったのを覚えていますが、初めて飲んだチチャ・モラーダという紫とうもろこしで作ったジュースはなんだか不思議な味のするもので、まだまだ知らないモノが多いペルーという国に希望と少しの不安を覚えた記憶があります。その後、一ヶ月のリマ滞在を終え、任地のイキトスというアマゾンにある街に向かったのですが、飛行機から降りた瞬間、カンボジアやフィリピンなどを彷彿させるジメジメして、蒸し蒸しとした空気に包まれ、その時初めて、途上国に来たんだなと感じたのを覚えています。数えきれないほどのバイクタクシー、方言、食事などありとあらゆるものがリマとは違い、まるで別の国に着いたかのようでした。

2.活動について教えてください

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パカイヤ・サミリア国立保護区内で撮った景色。アマゾン川と聞いて、茶色で濁った水を想像した方が多いと思いますが、保護区内ではジャングルに降った雨がきれいにろ過されており、空をきれいに反射して映すほど透き通った水が流れています。

SERNANPイキトス事務所において、私はパカイヤ・サミリア国立保護区に配属され、カウンターパートともに環境教育や啓発活動を行いました。イキトス市内から車で2時間、舟で最低3時間の国立保護区で1~2ヶ月滞在し、コミュニティを周って、活動を行うこともあれば、市内の学校を周り、環境イベントに参加することもありました。パカイヤ・サミリアは四国よりも大きな保護区で、保護区内には208もの集落があります。2年間でなるべく多くの集落を周り、環境教育のワークショップ(ゴミの分別や生物多様性に関して)を行うことを目標としていましたが、予算も限られている中で頻繁に保護区に行くことはできず、また自分のスペイン語能力により、やりたいことや考えていることがうまく伝わらず、もどかしい日々を送っていたのを覚えています。そのような中、イキトス事務所が管理している計8つの保護区の中の1つであるプカクロ国立保護区の部長に「日本人として道徳に関するワークショップをしてくれないか」と頼まれことをきっかけに自分のボランティア活動にやりがいも覚え、最後は納得のいく活動が少しできたように思います。

3.当時の隊員の経験が今現在の自分に与えている影響はなんですか

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保護区内にてアマゾン川にいる淡水魚であるピラルクの鱗剥がしを手伝った時の写真。ピラルクの身は食用として、うろこはピアスなどの装飾品として売られ、非常に価値が高いため、乱獲が進んでいます。そのため、SERNANPは住民と協力し、ピラルクの保護を行い、個体数の管理を行っています。

元々は専門商社の営業として働いていたので、ボランティア活動を終えた後は習得したスペイン語を活かして、商社や専門コンサルタントの職に就こうと考えていました。しかしながら、ボランティア活動を通して、地域開発や教育分野の発展に興味を持つようになったこと、そして在ペルー日本国大使館より働く機会を与えていただいたこともあり、現在は草の根外部委嘱員として働いています。ボランティアをするにしても、働くにしても、日本とは違う文化で生活するのは苦労します。電車やバスが時刻通りに来たり、会議や授業が時間通りに始まったり、日本では当たり前のことが当たり前に起きないことが多々あります。それらの経験から上手くいかないことをイメージし、常にリスク管理をするようになったと思います。もちろん悪い面だけではありません。南米の方々の家族や友人を思いやる心は見習わなければならず、南米の方々と関わる中で、もっと家族や友人とコミュニケーションを取り、感謝や自分が思っていることを積極的に伝えていこうと思うようになりました。

4.現在ペルーで活動している隊員たちへのメッセージをお願いします

誰も予想しなかった前代未聞の事態となり、全世界のボランティアが一時帰国をせざるえないことになりました。活動がうまくいっていた人、うまくいっていなかった人、日本に帰りたかった人、帰りたくなかった人、希望や不安、悲しみ、それぞれ様々な想いがあると思います。このような状況なので、いつまた皆さんがペルーに戻ってこられるかは分かりませんが、就職するにしても、ボランティアとして戻ってくるにしても、後悔のない選択をして、全力でそれに取り組んでほしいと思います。何をするにしても、最初は不安があると思いますが、思い切ってボランティアに参加した皆さんなので、きっと大丈夫だと思います。南米で鍛えられたポジティブ精神で、頑張ってください!

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プカクロ国立保護区近くのINTUTOという街における道徳の授業。日本での当たり前とペルーでの当たり前を動画や写真を使って比較しながら、尊敬、誠実さなどに関して、授業を行った時の様子。授業を踏まえて、自分がこれからどのように行動したいかを書いてもらいました。

5.最後にペルーの皆様へのメッセージもお願いします

2月の時点では、地球の反対側で起こっていたことが、いつの間にか南米までやってきて大変な事態となりました。続く外出禁止令で、先の見えない不安、ストレスを感じていたりすると思いますが、とにかく希望をもってこの事態を乗り越えることだけを考えてください。失ったお金、時間はもちろん大きいと思いますが、命は何よりも大事です。どうか無駄な外出は控えて、自分の身は自分で守ってください。中には友人や家族を亡くした方もいると思います。私も友人を一人亡くしました。本当に悲しいですし、誰一人としてこのような気持ちになってほしくはありません。しかしながら、ペルーの現状は悲惨です。皆さん一人ひとりが協力しなければこの事態は乗り越えることができないと思います。家族や友人想いのペルーの皆さんが少しだけでも他人のことを自分の家族のように思いやることができれば、きっと行動は変わると思います。

【画像】

プカクロ国立保護区近くのプロビデンシア集落で行った環境教育のワークショップ。学校や集落にゴミ箱がなく、色んなところにゴミが散乱していたので、子どもたちとまずはゴミ拾いをして、集落をきれいにし、ゴミ箱を一緒に作成してもらいました。