【ペルーJICA海外協力隊派遣40周年記念インタビュー】vol.7 佐高 宏美 隊員

2020年11月25日

ペルーJICA海外協力隊派遣40周年を記念し、歴代隊員にインタビューを実施しました。

氏名:佐高 宏美
配属先:ラ・リベルタ州貿易観光局
隊次:平成20年度2次隊
任地:マグダレーナ・デ・カオ
職種:観光業(現:観光)
派遣時期:2008年9月~2010年9月

1.ペルーの印象について教えてください

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村で土産物の作製する女性達と一緒に。布製品の土産物を作製している女性グループの方々です。着任当時は、バックやストールといった商品が多かったのですが、帰任する頃には、絵ハガキやキーホルダーになった人形など、多様な土産物が増えました。

早朝便でホルヘ・チャベス空港に到着し、着陸直前の機内から見えた、夜明け前の薄暗い暗がりの中に、オレンジ色の街灯があちこち点在している景色をきれいだなと思いました。空港からJICA事務所へはタクシーで向かいましたが、運転が荒く、周りを走る他の車の運転も荒く、日本の遊園地でジェットコースターに乗るより怖いと感じました。

リマは想像以上に都会で驚きましたが、一歩郊外へ出ると景色が一変し、発展途上国に来たことを実感しました。公共交通機関に乗る練習として、コンビに乗りましたが、乗客が着席するまで出発を待ってくれないため、油断していたら車内でこけそうになりました。

「ペルー人はこんな人」と、ひとくくりに表現することはできませんが、みんな基本的におおらかでユーモアがあり、踊ることが大好きな人という印象を持ちました。ペルー料理は大好きになりました。食材そのもの味も、味付けも口に合いました。移民として渡ってきた日系人の方々のおかげでしょうか。日本に帰国後もペルー料理のお店にはよく通っています。一番好きなペルー料理は、パパ・レジェ-ナ(ペルー風コロッケ)です。

2.活動について教えてください

私の活動は、マグダレーナ・デ・カオ村からバイクで20分程の場所にあるエル・ブルホ遺跡を訪れる観光客を、マグダレーナ・デ・カオ村にも呼び込むことでした。トルヒーヨでバスツアーに申し込み、村を通過しダイレクトに遺跡に行く観光客が多い中、どうしたら村に足を止めてもらえるか、お金を落としてもらえるかを考えていました。

村にはいくつかの女性達のグループがあり、手工芸品を土産物として販売していましたが、デザインや縫製が素人の私の目から見ても売り物とは言えず、女性達からのニーズもあったことから、デザイン教室を開催することにしました。私はデザインを教えることはできないので、日本から短期ボランティアのデザイナーに来てもらいました。その教室で教えてもらったバッグを、後日自分で作製し、嬉しそうに見せに来てくれたセニョーラの笑顔は今でも忘れません。配属先からは、外国人観光客の感覚「こういう商品があったら買いたい」というものを教えて欲しい、村人たちの観光地としての意識を向上させて欲しいという要望を受け、ゴミの分別やベジタリアンフードに関する教室を開催しました。帰国直前には、配属先と一緒に村の観光マップを作成しました。

3.当時の隊員の経験が今現在の自分に与えている影響はなんですか

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エル・ブルホ遺跡。マグダレーナ・デ・カオ村からバイクで20分程度の場所にあるエル・ブルホ遺跡。アドべ(土レンガ)で作られたピラミッドの中から発掘されたミイラや装飾品の数々は、敷地内にある博物館に展示されています。

帰国後、ペルーでの2年間の経験が一番与えた影響は、もっと日本の若い人たちにも海外に行って欲しい、途上国を見て欲しいと思ったことでした。水が出ない、電気も停電が多く不便な生活でしたが、日本に帰りたいと思ったことは一度もありませんでした。村の人々は、経済的には貧しいかもしれないけれど、家族や友人、地域の人を大切にしていて、心はなんて豊かな人達なんだとうと思うこともたくさんありました。

そのため、日本に帰国してからは大学で事務職員になりました。海外からの留学生や海外に行く日本人留学生のお世話をすることが目標でしたが、希望は叶わず7年で退職しました。今は、JICAの青年海外協力隊事務局でボランティア事業に関わる仕事に従事しています。忙しい日々ですが、やりがいを持って取り組んでいます。

2年間ペルー時間を経験したので、待ち合わせに1時間程度遅刻されても相手に対して怒ることがなくなりました。

4.現在ペルーで活動している隊員たちへのメッセージをお願いします

ペルーという国は日本から遠いですが、親日家が多く、日系人も多く、私たち日本人にとってはとても親しみやすい国だと思います。なにより、他のどの国と比べても、料理のレベルが高いと思います。活動で大変なことがあるかもしれませんが、おおらかで楽しいペルー人と美味しいペルー料理に癒されてください。頑張り過ぎないように頑張ってください。

5.最後にペルーの皆様へのメッセージもお願いします

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ペルーのパン。村では、いつもこのパンを食べていました。手のひらより一回り小さい大きさで、硬くて平べったいです。ナイフで切り込みを入れて、甘いイチゴジャムを挟んで食べるとおいしいです。

親愛なるペルーの方々へ

今年でペルーから帰国し10年になります。スペイン語もおぼつかない私を温かく迎え入れてくれ、いつも親身になって活動の相談にのってくれたラ・リベルタ州貿易観光局の方々、そしてマグダレーナ・デ・カオ村の全員に感謝しています。ペルーにいた2年間、日本に帰りたいと思ったことは一度もありませんでした。それは、悲しいときも辛いときも、いつもユーモアたっぷりに支えてくれたペルーのみなさんのおかげだと思います。私はペルーに赴任して4か月で虫垂炎になり、トルヒーヨの病院で手術を受けました。手術痕を見た大親友ルシアに、「やったね!ヒロミ、これで日本に帰国しても、シャワーの度にペルーのことを思い出すね。」と言われました。その言葉通り、今でもペルーで過ごした日々の記憶は薄れることはありません。そしてこれからも。今は離れているけれども、いつかかならず会える未来を信じて。

どうか、そのときまでは、ステイホームで健康に気を付けながら、元気に過ごしましょう。

ペルーのみんな、大好きです!