ペルーで活動することで見えてきたこと

2020年2月20日

2018年度1次隊 清水 希
所属:日ぺルー友好国立リハビリテーションセンター
職種:作業療法士

背景

私が活動する日ぺルー友好国立リハビリテーションセンターはペルーの首都リマにあり、ペルー最大のリハビリ病院です。日本の無償資金協力で建設され、施設・訓練用具ともに充実しています。病院は疾患別に8部門に分かれていて、私は切断・姿勢障害部門に属しています。当部門には糖尿病や事故、骨腫瘍などで四肢の切断をした患者さんが義肢の獲得を目的に来院します。私の活動は同僚の作業療法士と作業療法の改善を行うことで、具体的には同僚の診療補助を行いながら、リハビリ内容の検討・アドバイスの実施、診療のシステム作りを行っています。

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活動/介入

当院では大腿切断の患者さんが多いのですが、日本では症例数が圧倒的に少なく、作業療法士がかかわる場面がほとんどありません。私自身もこれまで担当したことがなく、初めは病状・治療の流れを把握するのに苦労しました。特に日本語での文献が少ないため、英語やスペイン語に四苦八苦しながら、学んだことを同僚に確認をしていました。切断に関する知識が身についてからは、同僚が行うリハビリに対する目的や目標を確認しながら、患者さんへのフィードバックを行いました。当院では日々のカルテ記載がなく、作業療法士が何を考えて治療を行っているのか、またその効果を検証・確認できるものがありません。そのため患者さんのニーズの把握、客観的な評価、目標設定がなく、決まりきった機能訓練をその場その場で行っている場面が多いように感じました。「細かいことは気にしない」「計画・目標を立てずその日その日をゆっくり過ごす」という国民性が影響しているのかもしれませんが、評価・目標設定・介入といった基本的な過程が曖昧で、これは実習でも意識されていないため、その必要性を理解してもらう必要がありました。

練習の様子

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アウトプット

同僚には必要性をなかなか理解してもらえませんでしたが、部門長である医師の理解を得ることができ、医師主導のもと初期評価表の作成、プロトコルの作成を行うことになりました。はじめは世界での標準的な治療を知るため英語での文献検索を行い、それをスペイン語でまとめたものを同僚と共有し知識の向上に努めました。現在は初期評価表・プロトコルのひな型を作成し、同僚が使用・修正していく予定です。

アウトカム

習慣や文化そして価値観も全く異なるペルーで、スペイン語という他言語の難しさだけでなく、考え方の違いを伝える難しさを感じています。知識の違いによる意見の差であれば知識を共有することで解決できますが、もともとの考え方が違うと解釈も変わってきます。すべて理解することは難しいですが、それを受け入れる柔軟性が身につきました。

学び

現在活動して1年半が経過しましたが、人の温かさを毎日感じています。異国の地で生活することは想像していたより大変ですが、ホームステイ先家族、現地の友人の明るさに助けられています。また患者さんも笑顔で話しかけてくれたり、生活に困窮しているはずなのに差し入れをしてくれたりと私に癒しを与えてくれます。また日本にいる家族、友人も私の様子を気にしてくれており、日本にいる時よりもさらに絆を感じるようになりました。一人では何もできないことを学び、支えてくれる人がいるから挑戦してみようと思えるようになりました。その他には、日本では生活面で不自由しないということはもちろんですが、仕事面においても恵まれています。例えば新しい知見はすぐに日本語で見ることができるし、研修会もたくさんあります。職場内でも同僚に相談したり、多職種との意見交換がすぐ行えたり、自己研鑽する場が当たり前にありました。外に出ることで自身がいた環境のありがたみを再認識するとともに怠けていた自分に気づくことができました。活動を通して自身と向き合う機会が多く、知らなかった自分を学ぶことができました。

新たなチャレンジ

現在は脳障害部門に配属が変更となり、新しい同僚とともに活動を始めて一週間が経過しました。作業療法士が抱えている課題は部門が違っても同様ですが、脳障害に関しては標準的な治療が明確であるため、現状を変更することの必要性への理解が得られやすく、熱心に意見交換ができています。しかしペルーでは発症後全くリハビリをせずにそのまま自宅に帰り、数週間から数か月経過してから当院へ来院しリハビリを開始するため、リハビリの効果・経過が日本と異なると考えています。それを踏まえて介入の工夫を同僚とともに検討していきたいと思います。