ペルー野球強化計画・39年目 2019年度大学連携短期協力隊派遣(近畿大学野球部)

2020年7月27日

2018年度2次隊 金田 青
所属:野球連盟
職種:野球

本記事は2020年3月(コロナウイルス感染拡大以前)に作成されたものである。

活動紹介

現在私はペルーの首都リマで、野球の指導を行っています。野球の競技人口は約1500人、世界ランキング43位の国で地元クラブチーム、及びナショナルチームの指導も行い、またU18担当コーチとして毎日充実した日々を送っています。今回は、2016年度に締結された“ペルー共和国野球振興支援に関わる青年海外協力隊ボランティア事業連携”の覚書に基づく、近畿大学との大学連携短期ボランティア派遣についての活動を紹介いたします。本大学連携事業ではペルーの野球競技力向上、競技者のさらなる底辺拡大、また日本とペルーの友好親善を目的とし、近畿大学の学生たちが1ヶ月間、関係機関と連携し現地の子供たちを中心に野球の指導を行います。今年度は2月5日~3月5日の期間で11名の学生が派遣され、私は現地コーディネーターとして主に(1)全日程計画およびペルー関係者との話し合い・調整を行うことと(2)近畿大学生へのスペイン語通訳含めたコミュニケーションの支援の役割を担いました。

近畿大連携実施にいたるまで

まず初めに、1ヶ月間の日程調整を行いました。日程調整する上で各関係者とのミーティングは欠かせません。ミーティングでは各所から意見、要望が沢山上がり活発な議論が展開されるのですが、最終的な意見がまとまらず、調整当初は収拾がつかなくなることが多くありました。そこで、意見がばらつかず時間も短時間で効率の良い話し合いをするため、昨年度実施した日程や意見を参考にまずは私自身が日程を組み立ててから各関係者と個別に日取りや日数の確認及び活動内容の話し合いを行うという方法で調整を進めました。突然の日程変更依頼や新たな提案など、様々なことが起きましたが、担当のボランティア調整員をはじめ、多くのサポートを受けながら、何とか形にすることができました。以下は、その活動内容です。

活動内容

(1)野球教室

首都のリマで野球教室を実施しました。開催場所は私が普段活動を行っている1)日系人クラブチームと2)カヤオ地区(首都リマ西部に位置する地区)です。
1)日系人クラブチームでは、現地指導者とのミーティングを通して、野球教室を共創するという初の試みを私や現地コーディネーターの通訳の下、実施しました。参加者総数60名というかなり大規模な野球教室を運営するということで、当初は大学生からも不安の声が多くありましたが、実際に始まると、話し合いのおかげもあり、指導者との連携もスムーズで、まるで日本のような活気に満ちた練習を行うことができました。終了後、指導者から「このような練習なら一か月という短期間でも実施したい」と満足度の高いコメントもいただくことができました。
2)カヤオ地区では、ペルー野球連盟と企画してキューバ人コーチとの合同教室を実施しました。このチームには元キューバA代表選手や楽天イーグルスのキューバ担当スカウトなど錚々たる顔ぶれのコーチが在籍しています。活動においては中南米と日本の指導方法を同時に行うと選手が混乱する可能性があることなどを考慮し、大学生がメイン、キューバ人指導者がサポートにつくという形で野球教室を実施しました。キューバ人からもより良い野球教室にするために、様々なアドバイスもいただき、私や大学生も、生徒と同じように勉強させてもらいました。

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日系人クラブチームにて

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カヤオ地区にて

(2)地方遠征

ペルー第三の都市と呼ばれるトルヒーヨへの野球指導遠征を行いました。ペルー野球連盟からも注力したい地域の1つに挙げられており、昨年に引き続き実現しました。昨年の参加者は4、5人程度の時もありましたが、今年は野球連盟と市役所の協力もあり、全年代20人前後の参加者が集まり野球教室を実施することができました。野球道具や球場の不足、試合機会が少ない等まだまだ課題が多い場所ですが、近畿大生と野球を全身で楽しむ選手たちをみて、将来の発展の可能性があると感じました。歴史的にも貴重な遺跡が残る地域のため、紀元前後700年ごろに栄えたモチェ文化の遺跡“太陽のワカ・月のワカ”を視察し、活動する土地への理解を深めました。

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トルヒーヨ遠征1

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トルヒーヨ遠征2

(3)日系人高齢者施設の訪問

今回は、子ども達への野球指導の他に友好親善を目的とし、2か所の高齢者施設1)沖縄県人会(以下、AOP)と2)エンマヌエル協会のカサ・デ・レポソを訪問しました。エンマヌエル協会の入居者は、日系人1世2世の方がほとんどで、日本語が話せる方もいます。入居者の方に通訳いただきながら、折り紙やカラオケ、ラジオ体操等を一緒に行い、AOPでは高齢者の方々と、カサ・デ・レポソでは職員と、野球を模したゲームを通して交流を行いました。ゲーム性があった事、なにより日本の文化である“野球”を共有できたことで、参加者全員が楽しく交流を行うことができました。

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AOPの施設にて1

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AOPの施設にて2

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エンマヌエル協会カサ・デ・レポソにて1

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エンマヌエル協会カサ・デ・レポソにて2

(4)ナショナルチームとの強化試合

U23とU18との強化試合を実施しました。U23は2月末に、U18は8月に世界大会予選が実施されます。そこで、近畿大生には仮想中南米国として、過密スケジュールや環境適応でヘトヘトの中、全力で試合に臨んでもらいました。結果はU23,18合わせて2勝1分け。つらく厳しい練習をしている選手にとって、この2勝は大きな自信、そして今後練習へのモチベーションへと変わると思います。

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おわりに

この野球振興支援事業連携は、今年で最終年でしたが、私自身、事業に関われたことに、幸せを感じています。
本年度の事業連携に関わったすべての方に、この場を借りて感謝申し上げます。
これからの事業連携がペルー野球発展により一層寄与できることを祈念しつつ、残りの任期を誠心誠意取り組んでいきたいと思います。