インドネシア「カカオ輸出促進・小規模農家支援」に対する融資契約の調印(海外投融資):カカオ産業のバリューチェーンを強化し小規模農家を支援

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2020年4月30日

国際協力機構(JICA)は、4月28日、シンガポールの農産物事業会社Olam International Limited(Olam社)との間で、インドネシアにおけるカカオ事業向け支援に関する最大5,600万米ドルの融資契約を調印しました。本事業は国際金融公社(IFC)との協調融資であり、IFCも同日、最大1億2,000万米ドルの融資契約を調印しました。

インドネシアはコートジボワール、ガーナに次ぐ世界第3位のカカオ生産国であり、カカオ農業は100万世帯以上が従事する重要な産業です。一方で、インドネシアのカカオ農地の多くは小規模農家が所有しており、生産効率や品質の低さが課題となっています。本事業はOlam社のインドネシア子会社が有するカカオ工場の拡張による生産能力の増強に加えて、小規模農家向け貸付を支援することで、同国のカカオ産業のバリューチェーンを強化し、小規模農家によるカカオ生産・取引量の増加を図り、小規模農家の所得向上に寄与するものです。

インドネシアは地域間格差が課題となっており、カカオ産地は貧困率の高いスラウェシ地域に集中しています。本事業を通じた小規模農家支援は、地域間格差の是正や貧困削減にも寄与するものです。また、同国のマクロ経済においては、貿易収支の改善が課題となっていますが、本事業は農業分野における輸出振興にもつながるものであり、SDGsゴール2及び8に貢献します。

Olam社は、世界60ヵ国でアグリビジネスを展開し、500万の小規模農家と取引する農産物事業会社であり、持続可能な農業の推進を基本戦略に掲げ、20ヵ国、74万の小規模農家に対して営農指導等の支援を行っています。2015年からは、三菱商事がOlam社に出資し経営に参画しています。

なお本事業は、2017年5月にJICAが途上国における民間セクター向けの協調融資を円滑に行うためにIFCと締結した業務協力にかかる覚書に基づく協調融資案件となります。

JICAは一人一人の尊厳を重視する人間の安全保障の観点から、カカオ産業に見られる児童労働、森林破壊、農家の貧困といった開発課題に着目し、開発途上国政府や企業、NGO等との対話を重ねてきました。その成果の一つとして、社会的・経済的・環境的に持続可能なカカオ産業の実現に向けて協働する「場」として「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」を2020年1月に設立しました。プラットフォームの枠組みを活用しつつ、多様な関係者の技術・ノウハウ・資金等を動員し、カカオのバリューチェーンで生じる開発課題の解決に向けた具体的な取り組みを検討していきます。


<各社・機関からのメッセージ>

Olam社 CFO兼マネージングディレクター N Muthukumar
このようなチャレンジングなビジネス環境の中で、小規模農家の営農支援及び農作物市場へのアクセス改善を企図する本事業に係る融資契約を締結することができ、嬉しく思います。本事業はOlam社の企業理念である「re-imagining global agriculture and food systems」に合致するだけでなく、JICA及びIFCの開発機関としての理念にも合致する事業です。JICA及びIFCより本事業に対する長期の支援を頂き、感謝申し上げます。

IFC  シニアディレクター Tomasz Telma
本事業はOlam社のデジタルテクノロジーを駆使した農業ビジネスの拡大支援を通じ、小規模農家の農作物市場へのアクセス改善、所得向上に寄与するものです。また、本件はJICAとの初の農業分野での協調融資案件です。IFCは今後もOlam社のような戦略的パートナーとの協業を通じ、JICAとの連携強化を図っていきます。

JICA 理事 山田順一
Olam社はサステナブルな農業に対する優れた取り組みをグローバルに行っており、インドネシアにおいては環境社会問題に配慮したカカオ農業ビジネスを展開されています。本件融資を通じて、Olam社の同国でのサステナブルなカカオ農業ビジネスが拡大され、カカオ生産者である小規模農家の生活の安定が図れることを期待します。また、本件はIFCとの初の農業分野での協調融資案件となり、嬉しく思います。JICAは今後もIFCと連携し、農業分野の支援に取り組んで参ります。