JICAの大エジプト博物館合同保存修復プロジェクトチームが読売国際協力賞を受賞

2020年11月2日

JICAがエジプトで実施中の「大エジプト博物館合同保存修復プロジェクト」の専門家チームが、読売新聞社による「第27回読売国際協力賞」を受賞することが、11月2日の読売新聞紙面にて発表されました。JICA事業の専門家チームが同賞を受賞するのは初めてです。

読売国際協力賞は、国際協力の分野で活躍する個人や団体、企業等を顕彰する賞として1994年に創設され、これまでに第1回の緒方貞子氏(国連難民高等弁務官、肩書は受賞当時)をはじめとして、各界の功績者による国際社会への貢献活動に贈られてきました。

JICAは2006年に大エジプト博物館(Grand Egyptian Museum)建設に対する円借款による協力を開始、現在開館を控えているこの博物館は、単一文明を扱うものとしては世界最大です。エジプト政府は、この国家プロジェクトの始動にあたり、博物館の隣に付属施設として大エジプト博物館保存修復センターを開設、同センターの人材育成を目的として、2008年に開始したのが、今回受賞した専門家チームが参画するJICAのプロジェクトです。JICAの専門家チームは、同センターを拠点に、エジプト側の専門家とともに文化遺産の保存修復に取り組み、技術移転を続けてきました。

本プロジェクト開始当初は、遺物のデータベース作成に着手し、次段階としてレプリカを用いた修復技術の習得に向けて活動、2016年から実施しているの現在のフェーズでは、本物のツタンカーメンの遺物を中心とする72点の保存修復や、各地の博物館等からセンターまでの遺物の移送作業等に取り組んでいます。このプロジェクトを通じて修復された遺物は、大エジプト博物館に展示される予定です。

賞の選考委員会座長の佐藤行雄氏は、「技術移転を惜しみなく行って人材育成に尽くすのは日本の国際協力の特徴です。これがエジプト側の信頼につながって貴重な文化財の修復作業を任されることになりました。派遣された専門家が木製品や染織品、壁画など日本の素材で培った修復技術を発揮し、文化遺産の保護に貢献したことにも感慨を覚えました」と本プロジェクトの活動を評価しています(11月2日付、読売新聞掲載の選考委員会座長 佐藤行雄氏の講評より一部抜粋)。

プロジェクトを通じて、考古学、保存科学、文化財移送、3次元計測、修復技術等の幅広い分野の日本の専門家が活躍してエジプト人技師への技術移転に取り組んできたこと、長期の活動を通じてエジプト側との信頼関係を構築し、同国の文化遺産の保護に貢献したことが、今回評価されました。国際協力の分野において、文化遺産の重要性に光があたる機会はまだ限られていますが、今後もJICAは、日本と世界の技術と人材をつなぎ、大切な文化遺産を未来に伝えていくための協力を進めていきます。