G7等の開発金融機関とともに「2Xチャレンジ:女性のためのファイナンス」イニシアティブを通じ150億米ドルの新たなジェンダーレンズ投資の促進目標を設定

2021年6月10日

国際協力機構(JICA)は、6月9日、G7コーンウォール・サミット(英国)の機会に、他の開発金融機関とともに、「2X(ツーエックス)チャレンジ:女性のためのファイナンス」イニシアティブを通じて今後2年間(2021年~2022年)の新たなフェーズにおいて150億米ドルの資金を動員することを目標とすると発表しました。

「2Xチャレンジ:女性のためのファイナンス」は、G7各国の開発金融機関に(注1)より、自らの資金提供を呼び水にジェンダー平等に資する民間投資を促進するため、2018年6月に設立されました。2Xチャレンジは、開発金融機関自らの資金提供を呼び水に民間の投資を促進することで、女性への投資の量及び効果を倍増させるという目標を示しており、このイニシアティブ立ち上げ時には2020年までに30億米ドルという資金動員目標を掲げました。これにより、女性の起業家やビジネス・リーダーの育成、労働市場への参入促進といった女性の経済的なエンパワメントを促進するためです。

2X チャレンジのメンバーである開発金融機関は、これまでの2Xチャレンジの対象事業数が200件以上になり、イニシアティブ立ち上げ時に設定した資金動員目標の2倍の70億米ドルが動員され、開発途上国の女性への投資の価値を認識している個人投資家から更に30億米ドルが動員されたと発表しました。

JICAは、2020年2月、サブサハラ・アフリカや南アジア地域を中心とする開発途上地域における女性の金融アクセスを促進し、経済的エンパワメントの向上に寄与するため、開発途上国の女性向け金融サービスを提供する金融機関への投融資を行うファンド「Women’s World Banking Capital Partners II」に出資決定しました。また、2020年11月には、CDC(英国)やDFC(米国)とともに、アジアの中小零細企業(MSME)を支援するファンドに出資しました。このファンドは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている女性事業者を中心としたMSMEの金融アクセス改善及び雇用維持を図ることを目的としたものです。

現在も続く新型コロナウイルスの蔓延は、男性よりも経済的な機会が大幅に少ない女性のおかれた状況をさらに悪化させており、コロナ禍で最も大きな打撃を受けたセクターの女性労働者が職場に戻らない場合、世界の経済成長から1兆米ドルが失われる可能性があると報告されています。起業家、リーダー、従業員、消費者としての女性を支援することで、ジェンダー平等を推進し、貧困を削減し、より包摂的で力強い経済成長を促進することを示唆する報告もされています(注2)。

今般の新たなフェーズには、これまでのG7各国の開発金融機関等に加えて、世界銀行の国際金融公社 (IFC)、欧州復興開発銀行 (EBRD)、オーストリア開発銀行 (OeEB) も参加し、今後2年間(2021年~2022年)の新たなフェーズにおいて150億米ドルの資金動員を目標として設定しています。

北岡理事長は、本イニシアティブの新フェーズの開始にあたり「人間の安全保障と質の高い成長の実現に向けて、JICAは、2Xチャレンジの理念の根底にある人間の尊厳を追求すべく、女性のエンパワメントにつながる投資を戦略的に行っていくことを約束する」と述べました。

JICAは参加している他の開発金融機関とともに、この女性のためのファイナンス(ジェンダーレンズ投資(注3)によって、女性が質の高い仕事に就き、レジリエントな(強靭な)ビジネスを興し、新型コロナウイルス蔓延による壊滅的な影響に対処することを支援していきます。

(注1) 2X チャレンジは、G7各国の開発金融機関である、CDC(英国)、Proparco(フランス)、JICA および JBIC(日本)、DFC(米国)、FinDev Canada(カナダ)、DEG(ドイツ)、CDP(イタリア)によって設立され、現在は、Swedfund(スウェーデン)、FinnFund(フィンランド)、FMO(オランダ)、SIFEM(スイス)、IFU(デンマーク)、BIO(ベルギー)、欧州投資銀行(EIB)などが参加。

(注2) COVID-19’s hit to women’s jobs could cost the world $1 trillion by 2030 | McKinsey & Company

(注3) ジェンダーレンズ投資とは、投資による収益とジェンダー平等推進を同時に達成することを目指す投資。