インド「女性金融包摂支援事業」に対する融資契約の調印(海外投融資):女性の金融アクセスを改善

2021年8月31日

NACが融資するNBFCから借入を受ける女性顧客(上下とも)

国際協力機構(JICA)は、8月25日、インドの金融機関Northern Arc Limited (NAC)との間で、女性向け金融サービスを提供するノンバンク金融機関向け貸付資金として、5,000万米ドルの融資契約に調印しました。本融資は「アジア諸国向け金融包摂促進ファシリティ」(Facility for Accelerating Financial Inclusion in Asia: FAIA)(2020年3月27日発表)のもとで、米国国際開発金融公社(USDFC)との協調融資として実施します。

インドは男女格差を測るジェンダーギャップ指数の総合スコアが153カ国中112位(Global Gender Gap Report 2020)と、ジェンダー間格差が極めて大きい国です。特に経済的活動への女性の参加機会が限定されており、同国の女性人口の40%強にあたる約2億8千万人が金融サービスにアクセスできない状況にあるとされています。こうした状況に対し、インド政府は女性の金融アクセス改善を重点課題の一つと定めています。
女性の金融アクセス改善にあたっては、地方部にも拠点を有し個人向けの貸し付けを多く行うノンバンク(Non-Bank Finance Company: NBFC)の果たす役割が大きく、そうしたNBFCが安定した資金調達を行える環境を整えることが重要です。本事業は、NBFCセクターへの融資等により当該セクターの資金調達を支援するNACへの融資を通じて、同国における女性の金融アクセス改善を図るものです。

今回の融資契約調印に際し、NACのCEOであるクシャマ・フェルナンデス氏は、「JICAとの提携により、金融サービスが行き届いていない顧客に多様な金融サービスを届けるという私たちの使命を推進できることを楽しみにしています。今回の融資は、NACの重要なターゲットの一つである女性の起業等女性の金融アクセス改善のために活用されます。」と述べています。
また、JICAの中澤理事は「NACはインドの人々へ金融サービスを届ける上で重要なNBFCの資金調達を支えるユニークかつ重要な金融機関の一つです。NACとの連携を通じて、同国の更に多くの女性が金融サービスを受けられるようになることを期待します。また、本件はインドにおけるUSDFCとの初めての協調融資となり嬉しく思います。」と述べています。

NACは2008年の設立以降、金融サービスセクターのプラットフォームとして金融機関、フィンテック、中・小規模事業者及び個人等との連携による事業を展開しています。
また、2019年12月に、インドにおける中・小規模事業者等、政府が指定する特定業種への貸出強化に向けた協業を目的に、株式会社三井住友銀行がNACに出資しています。

JICAによる本融資は、NACを通じて女性向け金融サービスを提供するノンバンク金融機関等に融資を行うことにより、同国の女性の金融アクセスを改善し、同国のジェンダー格差の是正及び持続的な経済成長に寄与するものです。また、2021年のG7コーンウォール・サミットで2022年までの新たなフェーズの実施が発表された「G7 2Xチャレンジ:女性のためのファイナンス」イニシアティブに資する取り組みとして(注)、SDGs(持続可能な開発目標)のゴール1、5、8、17にも貢献します。

(注)「G7 2Xチャレンジ:女性のためのファイナンス」イニシアティブは、G7各国の開発金融機関が、自らの資金提供を呼び水に民間の投資を促進することで、2022年までに150億ドルの資金を動員することを目指すものです。女性の企業家やビジネス・リーダーの育成、労働市場への参入促進といった女性の経済的なエンパワーメントを促進します。2Xは、女性への投資の量及び効果を倍増させるという目標を示しています。