ケニアで有機廃棄物を回収し昆虫飼料・有機肥料にリサイクルする Sanergy社に対するインパクト投資の実施(海外投融資)

【SDGsロゴ】飢餓をゼロに

【SDGsロゴ】安全な水とトイレを世界中に

【SDGsロゴ】働きがいも経済成長も

2021年10月8日

サナジーのナイロビのリサイクル工場の外観

昆虫飼料 KuzaPro(乾燥させたBSF幼虫)

国際協力機構(JICA)は、10月8日、ケニアの首都ナイロビのスラムに設置された衛生トイレの排泄物や市中の有機廃棄物を回収し、自社工場にてアメリカミズアブ(BSF:Black Soldier Fly)を用いて昆虫飼料・有機肥料・バイオ燃料にリサイクルする事業を展開するSanergy, Inc.(サナジー)に対し250万米ドルの投資を行いました。

ナイロビの人口は2009年の 304万人から 2030年に594万人にまで増加し、廃棄物発生量も2009年の1,848トン/日から2030 年には3,990トン/日まで増加すると予想されています。しかし、ナイロビで発生する廃棄物の約半分は不法投棄されており、収集される廃棄物については、ナイロビにある施設の処理能力 50万m3に対して既に180 万m3の廃棄物が持ち込まれている状況です。
また、ケニアの下水システムの各戸接続率は約12%に留まり、特に低所得者居住地域であるスラムでは排泄物が住居周辺に垂れ流されることも多く、住民の保健や水・衛生への影響が懸念されています。
加えて、ケニアの農林水産業はGDPの約30%、全労働人口の約40%を占める主要産業ですが、飼料・肥料資源に乏しく、割高な輸入製品に依存することが小規模農家の負担となっており、農業生産の拡大を妨げる要因とされています。
さらに、世界では2050年までにアフリカを中心に人口が90億人まで増加すると予想され、現在の食糧生産を2倍にする必要があり、特にタンパク質源の確保が急務とされています*1。今日の重要なタンパク源である家畜・魚養殖の増産には飼料生産の拡大が必要ですが、現在主に使われている大豆等の穀物や魚粉は安定した供給量・価格の確保や水産資源の乱獲といった問題を抱えており、量産化できる代替タンパク質源として昆虫飼料が注目されています。中でも、世界中に生息し、有機廃棄物を食べて育つBSFの活用・研究が進んでおり、BSFの世界の市場規模は2020年から2030年にかけて年平均成長率34.7%で増加し、2030年までに34億米ドルに達すると予測されています*2。

循環型経済を推進するサナジーのビジネスは、廃棄物処理・公衆衛生・農業生産性・食糧増産といった複数の社会課題の解決に貢献するものです。同社は米国国際開発金融公社(USDFC)から融資を受け東アフリカ最大の昆虫飼料工場を建設し、2021年に稼働を開始しました。JICAはケニアの廃棄物処理や農業開発を長年支援してきており、その経験を活用しつつ同社工場の操業やビジネス展開を支援していきます。また、廃棄物処理や農業生産性はケニアのみならずアフリカの多くの国々が共有している社会課題であり、同社は東アフリカ諸国をはじめとした他国への展開の準備も進めています。JICAはアフリカ各国でもこれらの社会課題の解決に取り組んでおり、そのネットワークを活用していきます。

 今回、JICAはオルタナティブ投資のグローバルリーダーであり計約1,630億ユーロ*3の資産を運用するAXA IM Altsが運営するインパクト投資ファンド等の民間投資家と協調して投資を行います。その他、サナジーには、アフリカで計約2億米ドル以上のベンチャーキャピタル(VC)ファンドを運用するNovastar Ventures、フィンランドの開発金融機関であるFinnfund、日系のアフリカ向けVCであるKepple Africa Ventures等が出資参画しています。JICAは、今後も民間・公的セクター双方の様々なアクターと協調し、革新的なビジネスモデルで開発途上地域の社会課題解決に取り組む企業を支援していきます。

*1 出典:FAO “Edible Insects”(2013)
*2 出典:Research and Markets “Black Soldier Fly Market by Product”(2021)
*3 出典:AXA IM data(2021年6月時点の未監査情報)