イラク「ウンム・カスル港ターミナル整備事業」に対する融資契約の調印(海外投融資)

ー民間事業者による貨物ターミナル建設・運営への支援を通じてイラクの経済発展に貢献-

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2021年12月15日

ウンム・カスル港の貨物ターミナル

ウンム・カスル港新ターミナルの工事の様子

ウンム・カスル港で利用される大型クレーン

国際協力機構(JICA)は、イラク南部バスラ県のウンム・カスル港の港湾貨物ターミナル整備事業に対して、最大4,000万米ドルを供与する融資契約に調印しました。供与資金は、同港における新規の貨物ターミナル整備費用に充てられます。本事業は、国際金融公社(IFC)との協調融資であり、JICAの海外投融資事業再開以降、初めての海外投融資によるイラク向けの支援となります。

イラクの石油・ガス関連製品を除く国際貨物取扱量のうち54%は海運によるものであり、港湾はイラクの国民生活及び経済を支える基幹インフラです。その中でもウンム・カスル港は、コンテナ、バルク、車両等幅広い商業貨物を取り扱う国内唯一の深水港で、大型船舶が寄港できる唯一の港湾です。近年イラクにおけるコンテナ貨物取扱量は大幅に増加しており、2015年から2035年までの20年間で約6倍の需要増加が見込まれている一方で、長年の経済制裁と紛争による港湾施設への新規投資不足から港湾の貨物取扱能力が不足しています。

イラクでは、国営公社であるGeneral Company for Ports of Iraq(GCPI)が港湾関連サービスの提供を担っていますが、GCPIは、サービスの水準向上のため、民間事業者へ一部港湾の整備・運営事業に係る権利を付与し、国際物流拠点となる既存港湾設備の改修、新規港湾建設、港湾運営において、民間セクターの活用促進を重視する方針を示しています。本事業はこの方針に沿って実施されるものです。

JICAによる本融資は、新規貨物ターミナルの整備により取扱貨物量の拡大及び港湾処理能力の向上を図るとともに、民間事業者のノウハウを活用した効率的な港湾管理・運営の実施を後押しすることで、イラクの経済成長のボトルネックである港湾施設整備の遅れの解消に資するものです。また、SDGs(持続可能な開発目標)ゴール9(産業と技術革新の基盤をつくろう)及びゴール17(パートナーシップで目標を達成しよう)に貢献します。

JICAはこれまでに、円借款「港湾セクター復興事業」(2008年度)、「港湾セクター復興事業(II)」(2014年度)を通じてイラクの港湾セクターを支援しており、ウンム・カスル港では、浚渫や航路の沈船除去、荷役機器の調達等を実施しています。また、技術協力「港湾セクターマスタープラン策定プロジェクト」ではイラク港湾セクターの中期的な開発計画策定を支援し、GCPI職員等に対して港湾経営計画立案手法やPPP事業の実務的知識等に係る研修を実施するなど、イラクの港湾セクターを長年に亘って包括的に支援しており、本事業はこれまでの協力をさらに発展させるものです。JICAは既往協力案件との連携を図りながら、イラク政府及び民間事業者を支援することで、イラクの長期的な発展を今後も支援していきます。

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