ブラジル「中小零細事業者金融アクセス改善事業」に対する融資契約の調印(海外投融資):デジタル技術を活用し、資金調達の地域格差・ジェンダー格差を是正

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2022年2月7日

国際協力機構(JICA)は、2月4日、ブラジルの民間金融機関であるBanco BTG Pactual S.A. との間で、ブラジルの中小零細事業者の金融アクセス改善と地域格差是正および女性の経済的エンパワーメント促進を図るために、2億米ドルを上限とする融資契約に調印しました。

 ブラジルでは中小零細事業者(MSME)が国のGDPの約30%を占め、雇用の62%を支えています。他方、これらMSMEは過去には不安定な経済の推移等に発展を阻害され、現在も同国内の与信残高に占めるMSME向け与信の割合は大企業と比べて低い水準が続き、資金調達が困難な中で苦しい経営を強いられています。

ブラジルの所得格差は大きく、最貧困地域の北東部では貧困率が人口の43.6%(約2,500万人)に上り、比較的発展している南部の12.1%を大きく上回ります。これら北部・北東部の州では金融機関の数が少ないうえ、MSMEは金融リスクが高いとみなされ、MSMEの金融アクセスにも格差が存在するとされています。さらに、2020年以降、新型コロナウイルス感染症拡大により企業の金融アクセスの機会が減少、2021年8月には企業の破産申請数の約75%をMSMEが占める結果となりました。2021年初頭にはブラジルの失業率は過去最悪の水準に達しています。このようにMSMEの金融アクセスの格差の拡大がブラジル経済にとって大きな打撃となっている状況に対し、本事業はBanco BTG Pactualが実施するMSME向け融資の拡大を支援するものです。JICAが行う融資のうち35%が北部・北東部の州向けに充てられます。 

また、ブラジルMSMEの中でも特に大きな資金ギャップに直面するのが女性の経営するMSMEです。同国では起業する女性が多く、女性が経営するMSMEの活躍がブラジル経済の更なる発展の原動力になると期待されていますが、ブラジルは中南米地域の中でも女性が経営するMSMEの資金ギャップが最も大きい国とされており、女性経営者にとって資金調達の難しさが事業拡大の大きな障害となっています。本事業でJICAが行う融資のうち30%は女性が経営するMSME向けに充てられます。JICAは2021年9月にジェンダーボンドを発行しており、本事業はジェンダーボンドによって調達した資金を活用します。

Banco BTG Pactual S.A.はブラジルのなかでいち早くデジタルプラットフォームを本格導入してその金融サービスをブラジル全土に提供しており、JICAが国土の広いブラジルでMSMEの金融アクセス改善を図るうえで重要なパートナーです。Banco BTG Pactual S.A.のデジタルプラットフォームを通じた融資は金融機関の数が少ない北部・北東部州の金融アクセス改善に効果を発揮すると期待されます。

本事業は、米国海外民間投資公社(USDFC)との協調支援案件であり、ブラジルのMSMEへの金融アクセス改善を通じた持続的な産業発展に寄与するもので、SDGsゴール5(ジェンダー平等を実現しよう)、ゴール8(働きがいも経済成長も)、ゴール9(産業と技術革新の基盤をつくろう)等に貢献します。