タイ「低所得者層金融包摂支援事業」に対する融資契約の調印 (海外投融資):コロナ禍と物価高騰の影響を受ける低所得者層の金融アクセスを改善

【SDGsロゴ】貧困をなくそう

【SDGsロゴ】1人や国の不平等をなくそう

【SDGsロゴ】1パートナーシップで目標を達成しよう

2022年9月29日

署名式の様子

MTCの役員(右)が顧客にMTCのモバイルアプリを説明する様子

MTC土地担保ローン顧客

国際協力機構(JICA)は、9月27日タイ王国のMuangthai Capital Public Company Limited(以下、MTC)に対し、タイにおける農家、零細事業者、個人等の低所得者層向け貸付資金として、海外投融資による99億円の融資契約に調印し、同月29日にバンコクで契約調印セレモニーを実施しました。本融資は、2019年に日本政府が発表した「対ASEAN海外投融資イニシアティブ」に沿うもので、その柱の一つとして創設された「アジア諸国向け金融包摂促進ファシリティ」のもとで、三井住友銀行(SMBC)との協調融資により実施されます。

同国では、新型コロナウイルスの影響により、2020年3月以降70%以上の世帯の収入が減少しており、うち約80%が地方部の低所得者層です。タイでは首都バンコク首都圏と地方部の経済格差が大きく、バンコクの貧困率が2%以下であるのに対し、北部・東北部・南部はいずれも12%を超えており、特に2016年以降には地域間格差が拡大傾向にあります。新型コロナウイルスに加えて、ウクライナ情勢を受けた肥料価格の上昇等も影響し、農家の約半数が50%以上の収入減少を経験する等、農業セクターの所得が悪化しています。農業セクターの平均月間収入が6,000バーツ(約2万3000円)である一方、全セクターは14,000バーツ(5万4000円)と、格差が大きい現状です。また、中小零細事業者の融資アクセスが限定的であり、約60%が金融機関から融資を受けられない点も課題とされています。

融資先のMTCは、タイでマーケットシェアトップに成長したバイク担保ローンに加え、車両担保ローン、農業機械担保ローン、農家が多く利用する土地担保ローン、零細事業者向けローン、個人向けローン等様々な商品を提供するノンバンク金融機関です。通常の金融機関では金融アクセスが行き届かない顧客に対して、透明性が高く公正かつ適正金利の金融サービスを提供することを経営方針としており、顧客の60%以上を低所得者層、約65%を同国北部・東北部・南部の低所得地域居住者が占めています。

本事業ではMTCへの長期融資を行うことにより、低所得者層における農家、零細事業者及び個人の金融アクセスを促進し、もって経済格差の縮小及び持続的な経済成長に寄与することを目的としており、SDGs(持続可能な開発目標)ゴール 1(貧困をなくそう)、10(人や国の不平等をなくそう)及び 17(パートナーシップで目標を達成しよう)に貢献します。

また、本融資は、2021年3月30日に導入されたSMBCとJICAの協調融資におけるサステナブルファイナンス(*1)・フレームワークの適用案件でもあります。本フレームワークでは、開発途上国の開発事業の課題設定・モニタリング・事業効果測定に関するJICAのノウハウを活用し、SMBCとJICAが共通の事業効果測定方法・モニタリング手法を用いることで、融資先が創出する開発インパクトを評価し、共有し、マネジメントすることとしています。そうした手法を内包することで、本フレームワークはSDGs達成に向けた取り組みとして国際的に認められた各種のサステナブルファイナンス原則(*2)に合致・準拠したものとして、外部評価機関による第三者意見を取得しています。JICAは本フレームワークの導入により、今後もSMBCとの連携を積極的に推進し、開発途上国・地域の経済社会の発展に向けた民間資金動員を加速していきます。


(*1)サステナブルファイナンス:環境・社会・ガバナンス(ESG)といった観点も踏まえながら、持続可能な経済・社会に必要な課題解決のため、資金を活用するもの。
(*2)サステナブルファイナンス原則:国際資本市場協会(ICMA)やローン・マーケット・アソシエーション(LMA)等が定めるグリーンローン原則、サステナビリティ・リンクローン原則、グリーンボンド原則、ソーシャルボンド原則、サステナビリティボンド・ガイドライン。

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