ICTの成長著しい西バルカン:セルビアでのスタートアップ支援プロジェクトNINJA始動!

2022年11月24日

ビジネスを通じて途上国の社会課題の解決を図り、質の高い雇用創出の契機となる起業家の育成のため、JICAは2020年に起業家支援のプラットフォームとなる「プロジェクトNINJA(NINJA = Next Innovation with Japan)」を立ち上げました。アフリカから始まった本プログラムは、今日では全世界に展開しています。
この度、西バルカン地域において初となるNINJAアクセラレーションプログラム(注1)がセルビアにて始動しました。セルビアでは、近年ICTセクターの成長が著しく、魅力的なスタートアップエコシステム(注2)の形成が進んでいます。今回はセルビアのスタートアップ7社がNINJAに参加し、2023年2月3日(予定)のピッチイベント(注3)まで3か月間のメンタリング、ワークショップなどハードなプログラムを走り抜けます。今回は、参加企業の一社、Smart Wateringの代表Lazarさんににインタビューを行いました。

(注1)スタートアップにメンタリングなど伴走型の支援を行い、短期間で事業を成長させるプログラム
(注2)スタートアップを取り巻く、投資家や大学、公的機関、大企業などの様々なアクターがネットワークを作り、スタートアップを生み出しながら発展していくシステム
(注3)スタートアップが自社の事業を投資家などにプレゼンし、資金調達や認知度向上を目指すイベント

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参加スタートアップのメンバー達。前列右から2人目がSmart WateringのCEO:Lazarさん

自動水やり・肥料散布システムで、農家の時間確保と水資源節約に貢献

私たちが提供するサービスは、農地の灌漑や肥料の状態をリアルタイムで把握し、水やりと肥料散布のリモート操作を可能にするシステムです。学生時代、遠く離れた実家の畑で、ヘーゼルナッツをリモートで栽培するために製作した試作品から生まれました。本システムを利用することで、水と肥料の必要な量が把握できるようになり、水資源を70%節約することができます。また、リモート操作を可能にすることで、現場に長時間滞在する必要がなくなり、労働時間を大幅に短縮できるようになります。セルビアの農家は毎朝4~5時に起き、農作物の世話や販売等多岐に亘る仕事をこなしており、ストレスが溜まることもしばしばあります。労働時間の短縮により、人件費削減だけでなく、農家のストレスの軽減や、ワークライフバランスの向上にも役立ちます。あるセルビア人農家は、週末に家族と外出することができるようになったと語ってくれました。

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自動水やりシステムをセルビアの名産:ブルーベリーの栽培に活用

NINJA参加を決めたきっかけ

今回NINJAに参加したのは、アジア・アフリカ市場の知見に長けたメンターのサポートを受けられることが主な理由です。私たちの技術は、この地域の農業に非常に約に立つと考えており、本プログラムを通してより多くの農家に利用してもらえるよう、市場拡大したいと考えています。プログラムが始まって3週間ほど経ちましたが、メンタリングやワークショップを通じ、とても素晴らしいサポートを受けています。先日はプログラムのゴールを設定し、今後数か月で必要な活動が更にクリアになりました。

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NINJAプログラムでのワークショップの様子

日本への印象と、日本企業との協働について

日本人は責任感がありプロフェッショナルな印象、日本企業はとても質の高いものづくりの技術を有している印象があります。興味を持ってくださる日本企業がいれば、ハードウェア製品の開発・生産に関して協働できると嬉しく思います。これまで幾人かの日本人と会ったことがありますが、日本人もセルビア人も共に誠実で温かい人柄で、きっとビジネスがしやすいと想像します。

今後の目標

より多くの農家の方々の生産効率と所得の向上に貢献したいと考えています。また、より少ない水で農作物を生産できるサステナブルな農業を促進したいです。今日では、セルビア国内だけでなく、ボスニア・ヘルツェゴビナやクロアチアでも私たちのシステムを利用して頂いており、中国でもパイロット事業を実施中です。今後、ヨーロッパ、アフリカ、アジアで更に多くの農家の方と一緒に働きたいと考えています。

セルビア・プロジェクトNINJAについて

本プログラムには上記でご紹介したSmart Watering(Smart Watering an autonomous drip irrigation system(注4)に加え、以下6社のエネルギー溢れるスタートアップが参加しています。2023年2月3日(予定)のピッチイベントでは、各社がNINJAプログラムを経てブラッシュアップした事業を披露する予定です。成長著しいセルビアのスタートアップにご興味のある方は、是非ご参加ください。
(注)詳細が決まり次第、本ホームページにて情報を掲載いたします。

Tapni

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NFC技術(注5)を用いた、スマートフォンをかざすことで共有できるデジタル名刺を提供。失くしやすく、数年経つと記載連絡先が使えない等の紙媒体名刺をデジタル化することで不便さを解消し、更なるビジネスコミュニケーションの活性化を目指す。オーストリアやメキシコにもオフィスを持ち、2022年には100万ドル以上の売上を達成。
(注5)かざすだけで周辺機器との無線通信を可能にする技術。交通系ICカードにも活用されている。

ZenHire

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人材採用プロセスにおけるエントリーシートのスクリーニングや一次面接に加え、不採用者へのフィードバックをAIが実施するサービスを提供。採用に係るコストの削減だけでなく、より企業に合った人材を採用することで、社員のモチベーションの向上と離職率の低下を目指す。

DATA DO

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小売業における企業の売上・在庫データを分析・活用し、オペレーションや生産性、製品、マーケティングの改善等、売上向上に資するサービスを提供する。データ分析やマーケティング等の分野で20年以上の経験を持つメンバー5人で創業、Global Fortune top100に掲載企業をクライアントに持つ。

OmniShop

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ファッションブランドを対象とし、メタバースやNFT技術を用いたECアプリの開発及び運用サービスを提供する。ブランドが魅力的に見えるようカスタマイズし、アプリ利用者とブランドが直接コミュニケーションを取れるサービスも提供。

Digital Spark

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BtoC企業の売上向上に貢献すべく、小売店販売員が利用するアプリを提供。販売目標の管理や在庫最適化、販売員の売上実績把握やインセンティブとしての賞与付与をアプリを通して行う。2022年現在、10か国2815店舗で利用されている。

Easypass

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小学生~大学生の学生と、オンライン個別家庭教師をマッチングするサービスを提供。学校の勉強についていけない学生や、学校で学ぶ分野以外を学習したい学生と、仕事を増やしたい家庭教師のニーズを結びつける。昨年の創業から既に3000人のメンターを確保しており、当該サービスにおいてバルカン地域の先駆者となることを目指す。

上記参加企業、2月3日(予定)のピッチイベント等、本プログラムにご関心のある方は、以下までご連絡ください。
国際協力機構(JICA)中東・欧州部 欧州課 佐々木あみ
メール:Sasaki.ami@jica.go.jp