JICAボランティア ソロモン日記(46)

2020年4月3日

JICA海外協力隊 伊藤 正枝(看護師 イザベル州 ブアラ病院)

皆さん、初めまして。2018年度2次隊の伊藤正枝と申します。私はイザベル州ブアラ病院で看護師隊員として活動しています。任地のブアラはソロモン諸島サンタイザベル島のイザベル州の州都で、ガダルカナル島の首都ホニアラから北東120kmに位置し、飛行機で約45分(船で約8時間)を要します。イザベル州は、細長い地形の海岸沿いや山の奥地にも集落や村が点在し、多くの人が高床式のリーフハウスで生活しています。ブアラの中心部は道路が整備されているためトラックや乗用車で隣の村まで移動できますが、それ以外の地域へは基本的に徒歩で山間の村々に行くか、海岸や川沿いにある村へはエンジン付きのボートで移動するしかなく、医療施設までのアクセスは悪く、天候によっても左右されやすいため気軽に往来することが難しい現状です。そのため、日本であれば治癒可能な肺炎や喘息を悪化させてしまい、命を落としてしまう子どもも少なくありません。また、妊婦の中には医療施設までの移動中に、間に合わず自宅や船の中などで出産してしまうケースもあります。ソロモンでは医療従事者が慢性的に不足しており、ここイザベル州においてもブアラ病院に医師が2名いるのみで、看護師が医師同様に診察、診断、薬剤処方、縫合処置などを行っています。また、村にあるクリニックにおいては看護師一人しか常駐していないため、分娩介助も看護師が行なっています。そのような医療事情の中、現在の私の主な活動内容は生活習慣病の予防対策啓発活動です。ソロモンの人は元々、畑で採れた野菜や果物、海や川で獲れた魚介類を食べて生活していました。しかし、都市部を中心に生活様式や社会環境が変化し、生活習慣病に罹患する人が急激に増加しています。これまでの伝統料理から米やインスタント麺といった加工食品が食事の中心となり、栄養バランスの偏りや炭水化物の過剰摂取などが原因となり、国民の約6割は太りすぎまたは肥満水準となり、全死亡の約7割は心血管疾患や糖尿病などの生活習慣病が占めるようになりました。配属先病院には糖尿病の合併症の一つである抹消性壊死感染で下肢や足趾を切断した入院患者が多く、退院後も自宅で困難な生活を余儀なくされています。そのような現状から生活習慣病に罹患する人を少しでも減らしたいとの想いで、配属先病院やコミュニティ、学校で定期的にヘルストークやエクササイズを実施しています。着実な成果をあげるにはまだまだ時間がかかりますが、少しずつ自分の周りの人たちを中心に意識が変わってきているのを実感しています。

赴任した当初は、活動はおろか日常会話もままならず現地の看護師の引き継ぎ内容も全く理解できない、カルテは全て手書きで何が書かれてあるのか分からない、行われている医療処置のやり方も違い、私が日本の病院で働いてきた臨床経験は殆ど通用しませんでした。これではソロモンの新人看護師にも到底及ばず、まるで赤子同然のように感じたこともありました。そんな私のことを現地の人たちは温かく受け入れてくれ、一つ一つ丁寧に教えてくれました。文化や慣習がソロモンとは異なる日本で生まれ育った私は、お互いを尊重し認め合うこと、人と人とが共生しながら生きていることを改めて彼らから教わりました。物質的な豊かさが無くとも、家族や友人と食事や楽しい会話をして共に時間を過ごすことで十分満ち足りているソロモンの人たちの暮らしぶりを知りました。そんな彼らに、日本で重視されがちな効率や合理的な考え方は合わず、何がソロモンの人たちにとって最良な医療なのか、自分に一体何ができるのかということを常に自問自答しながら日々活動をしています。現地の人たちの役に立ちたいと想って選んだ看護師という職業に実際に就き、日本で経験を積んで満を辞してやってきたソロモン、蓋を開けてみたら何にもできないと落ち込み、言葉の壁に悩み苦悩していた私を現地の人はいつも温かく見守ってくれ、励まし助けてくれ、一緒に食事をし、毎日笑い、時に泣いたり怒ったり。そんなソロモンで過ごす特別な時間も残り7ヶ月。残りの任期で少しでも恩返しができるよう自分のできることを焦らずにやっていきたいと思います。

【画像】

地域住民に向けて同僚スタッフと一緒にヘルストークを実施

【画像】

クリスマスを一緒に過ごしたソロモンの子どもたち

【画像】

学校の教員に向けてヘルスチェックを実施

【画像】

コミュニティで一緒にエクササイス

【画像】

地域住民に向けて生活習慣病のヘルストークを実施