所長あいさつ

南スーダン共和国は、2011年7月9日にスーダン共和国から南部スーダンが分離独立した世界で最も若い国です。
スーダンのもとでの長期間の内戦が終了し、南スーダン共和国は希望に満ちあふれていました。しかしながら、2013年、2016年に南スーダン国内において紛争が発生し、甚大な被害が発生しました。これらの内戦や紛争による南スーダンからの難民は230万人、国内避難民は170万人とされています。
紛争は、2017年12月に停戦合意され、2018年9月の和平合意(R-ARCSS)署名により終結しました。2020年2月には暫定統一政府が成立し、国づくりが再開しました。現在、2024年12月の総選挙に向けた準備が進められています。
新型コロナ感染症、気候変動、ウクライナ戦争などによる複合的な危機は、経済基盤や社会構造が脆弱な国や地域の人々に大きな打撃を与えています。南スーダンでは、内戦や紛争での破壊に加え、この複合的な危機により、人口の2/3以上の約810万人が人道支援を必要としていると推定されています。

一方、南スーダンは繁栄の可能性を秘めています。例えば、農業セクターでは多様な作物の栽培に適した雨量や肥沃な土地、畜産業に適した広大な放牧地、大規模な森林、豊富な漁業資源があります。また、2023年のバスケットボールワールドカップへの出場も決定し、これからの国づくりを支える将来性のある若者もたくさんいます。

対南スーダン共和国国別開発協力方針(2021年9月)では、「南スーダンの平和の定着及び経済の安定化に向けた国づくり支援」を大目標に掲げています。日本は、戦後復興や東日本大震災からの復興などの試練からの復興の経験を有しており、これらは、南スーダンの国づくりにも参考になると考えています。また、日本は、南スーダンの周辺国において様々な開発協力事業を展開し各国の国づくりに協力してきた経験を有しています。
JICAは、これらの日本の経験も踏まえ、南スーダン政府による包摂的な公共サービスの提供やコミュニティの強化への取り組みに協力し、行政と住民及び住民間の信頼醸成に貢献し、平和で誰一人取り残さない包摂的な社会を実現していきたいと考えています。
2013年から建設を開始したナイル架橋とジュバ市給水施設は、2度の紛争やコロナ感染症による長期の中断を経て、それぞれ2022年、2023年に完工しました。様々な困難のもと、これらの建設事業をあきらめることなく両国が継続してきたことは、南スーダンの人々や政府の日本人や日本に対する信頼につながっていると考えています。
南スーダン、さらに、東アフリカ地域の平和と繁栄のためにこれからも協力を進めていきます。

2023年5月
JICA南スーダン事務所長
田中博之

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